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ありふれた物質でテラヘルツ波を可視光に変換

November, 15, 2017, 東京--赤外線より波長の長い電磁波であるテラヘルツ波は、金属以外の物質を良く透過することから空港等のセキュリティ検査に応用されているほか、核融合プラズマの高周波加熱装置や次世代の大容量無線通信帯域としての利用も期待されている。しかし、テラヘルツ波は分子の非常に弱い振動や回転にのみ作用するので検出が困難である。
 東京工業大学の細野秀雄教授、戸田喜丈特任講師らのグループは、弘前大学の石山新太郎教授、福井大学の出原 敏孝特命教授、パシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)のピーター・スシュコ博士らと共同で、石灰(CaO)とアルミナ(Al2O3)から構成される化合物12CaO・Al2O3(C12A7)がテラヘルツ波を吸収し、容易に視認できる可視光に変換できることを見出した。この特性は、ナノサイズのケージ中に閉じ込められている酸素イオンの振動がテラヘルツ波を吸収することにより誘起されるため生じることが分かった。酸素イオンは狭いケージの中で強制的に振動させられることにより、ケージの内壁と繰り返し衝突し、励起され発光する。C12A7はアルミナセメントの構成成分の1つで、安価で環境にやさしい物質。室温・空気中で安定な電子化物は、そのケージ中の酸素イオンを電子で置き換えることで初めて実現するなど、いろいろな機能が見出されてきた。それらの機能に加えて今回、遠赤外光の可視光変換という新しい機能が見出されたことになる。
 今回の成果は、セメントの構成成分でもある、安価な化合物C12A7のみを使用し、検出の困難なテラヘルツ波を可視光に変換できることを示した。これにより、テラヘルツ波検出のための装置の簡略化が期待できる。また、C12A7のナノケージには酸素イオンのほか、水素物イオンやハロゲンや金のアニオンなども取り込むことが可能。これらのイオンの振動を励起する波長のテラヘルツ波を照射すれば、酸素イオンの場合とは異なった色の発光や元素プラズマが得られるものと考えられる。
 これまでC12A7というありふれた元素から構成される物質を舞台に、電気伝導性、超伝導、電子放出源、アンモニア合成触媒、二酸化炭素再資源化のための還元作用などいろいろな機能を開拓してきた(元素戦略)が、今回は遠赤外光の可視光への波長変換という新しい機能が見出された。ありふれた元素から構成されていても、そのナノ構造由来の多種多様な機能を有していることが分かる。
 研究チームはC12A7に限らず、元素の組み合わせとナノ構造に着目することで未知の新しい機能を見出すことができるのではないかと期待している。
(詳細は、www.jst.go.jp)