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Science/Research 詳細

ライス大学、3Dバイオプリンティングへ向けて前進

July, 19, 2017, Houston--ライス大学(Rice University)とベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)の生体工学研究チームは、3Dプリンティング移植可能な組織と器官を目指す研究で、機能する毛細血管をもつインプラント可能な組織の生成で基本的な前進を実証した。
 Biomaterials Scienceに発表された論文で、細管形成というプロセスを始めるために人の内皮細胞と間葉幹細胞を組合せた利用法を示した。細管形成は、送血毛細血管の形成にとって重要である。
 これは、人工多能性幹細胞(iPSC)から作られる脆い内皮細胞では重要なステップ。iPSCは、潜在的に患者のどの細胞からも作ることが可能な種類の細胞。iPSCは患者特有であるので、研究者は、患者の免疫系によって拒絶されるリスクなしに移植できる組織と置換器官の生成にそれらを使用する方法を見つけ出したいと考えている。しかし、ラボでの成長中、内皮細胞の脆弱さが、この重要な細胞タイプの利用を制限していた。これは、全ての脈管構造で見つかるものである。
 論文の筆頭著者、Gisele Calderon、院生は、「人の細胞の利用と、その血管形成潜在力を初期の血管網形成にしたがいライブモニタできることを実証したので、われわれの研究は重要な治療的な意味がある」とコメントしている。
 「これらの細胞が毛細血管構造を形成できることを確認した。フィブリンという自然の材料と、ジェラチン・メタクリル樹脂という半合成材料、GelMAの両方で形成できる。GelMAの発見は特に興味深い。それが、今後の生体組織工学アプリケーション向けに、直ちに3Dプリントできるものだからである」。
 生体組織工学は、再生医療としても知られており、幹細胞生物学と材料科学の進歩を統合して移植可能な組織や器官の生成を目的とする分野。組織工学は、幹細胞を特殊な細胞や器官の形成に向ける数々の方法を見出している。血管新生がないと、厚さ数ミリを超える組織は栄養不足で死ぬ。したがって、血管を持つ組織を成長させる方法を見出すことは、最も必要とされる進歩である。
 「究極的には、われわれは生きた細胞で3Dプリントしたい。3Dバイオプリンティングとして知られるプロセスで治療応用向けに完全な血管のある組織を作りたい。そこに至るために、新しい血管形成の機械的、生理学的側面をもっとよく理解しなければならない。バイオプリンティングが、そのプロセスに影響する仕方についてもよく知る必要がある。われわれは3Dバイオプリンティングを使って、ポンプをつなぐことができる大きな血管を持つ組織を作ろうとしている、またその戦略をこのiPS-ECと統合して、新しい組織に栄養がよく行き届くように、最も微細な毛細血管を形成するためにも役立てたい」。
 人の身体の数10兆の生きた細胞のそれぞれが、毛細血管として知られる微細な血管によって酸素と栄養を絶えず供給されている。直径1㎜の数千分の1を計測すると、個々の血液細胞が一列になって血管を進まなければならないほど狭い毛細血管もある。毛細血管は内皮細胞網からできている。これは人体の全ての血管の内側表面に並んでいる細胞である。
 毛細血管を作る最初のステップ、細管形成プロセスでは内皮細胞は一連の変化を経験する。まず、空胞と言われる小さな空のチャンバーを作り、次に隣接の細胞と接続し、空胞を接続して内皮細胞に裏打ちされた管を形成する。これらが最終的に毛細血管になる。
 研究では、研究チームは、iPSCから成長させた市販の内皮細胞が細管形成能力があるかどうかを調べた。テストでは、2つのタイプの半固形ジェル、フィブリンとGelMAでこの潜在能力を調べた。最後に研究者は、第2のタイプの幹細胞、人の間葉幹細胞が血管形成の尤度を改善できるかどうかも調べた。
 実験の第1段階は、細胞を遺伝子操作して、1つは核だけに見つかり、もう1つは細胞の至る所で見つかる2つのタイプの蛍光タンパク質を生成するために、第3世代のレンチウイルスレポーターを成長させることであった。永続的な遺伝子組み換えで、研究チームは非侵襲的に細胞形態を観察し、後の定量的測定のために、個々の細胞の挙動も特定することができた。次に細胞はフィブリンと混合され、一週間培養した。1日に数回、顕微鏡を使って成長するサンプルを写真に撮った。2つの蛍光マーカーにより、細胞の細管形成の進行具合を経時的画像が明らかにした。
 Gisele Calderonによると、数カ月、数10の実験で、チームは、GelMAでロバストな細管形成のワークフローを開発した。これに間葉幹細胞を加える必要があった。これは別の種類の人の幹細胞で、以前に、小管形成を安定化することが示されていた。
 Jordan Millerは、3Dバイオプリンティングの臨床アプリケーションは、次の数十年で急速に進歩すると見ている。機能する毛細血管網を持つ微小組織サンプルでさえ、薬剤の試験と同様ラボ応用向け用途が見つかるのは予想外に早いと見ている。
 (詳細は、www.rice.edu)