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量子物理学を利用してダイヤモンド:欠陥を結合

April, 17, 2017, Wien--ダイヤモンドの原子欠陥は量子メモリとして使える。ウィーン工科大学(TU Wien)の研究チームは、量子物理学を利用して様々なダイヤモンドの欠陥を結合することに初めて成功した。
 微小欠陥をもつダイヤモンドは将来の量子技術で重要な役割を演ずる。これまでかなりの期間、TU Wienの研究チームは、そのようなダイヤモンドの量子的性質を研究してきたが、今回2つのそのようなダイヤモンドの特定欠陥を相互結合することに成功した。これは新しいアプリケーション開発の重要な前提となる。例えば高感度センサ、量子コンピュータのスイッチである。
 ハイブリッド量子研究グループのJohannes Majerによると、極めて特異的な欠陥を持つダイヤモンドは、量子コンピュータ実現のための1つの潜在的な候補である。純粋なダイヤモンドは、炭素原子だけでできている。しかし、ダイヤモンドの中には、炭素原子の代わりに窒素原子の点があるものもあり、またダイヤモンドの原子構造内で、これに隣接して全く原子が存在しない異常性がある。これを「空孔」と言う。窒素原子と空孔で構成されるこの欠陥が、長続きする状態の量子系を形成し、こうした特異的欠陥を持つダイヤモンドは量子実験に最適となる。

 多くの量子的技術応用の重要な前提は、そのような量子系を結合できることである。これまで、ダイヤモンド系では、それはほとんどできなかった。「そのような2つの窒素-空孔欠陥間の相互作用は、非常に弱く、10nm程度の範囲である」(Majer)。
 しかし、TU Wienの研究チームは、この偉業を成し遂げた。これには、マイクロ波放射を生成する超伝導量子チップの助けを借りた。
 これまで何年間も研究チームは、マイクロ波の助けを借りてダイヤモンドをどのように操作できるかを研究してきた。「ダイヤモンド内の数十億の窒素-空孔欠陥はマイクロ波場で集合的に結合される。この方法でダイヤモンドの量子状態は操作し読み出しできる」とMajerは言う。
 今回、研究チームは、次のステップに進んだ。2つの異なるダイヤモンドをチップ端で結合することができた。これにより、2つのダイヤモンド間の相互作用が生まれる。「この相互作用は、
チップ間のマイクロ波共振器が仲立ちする。ここでは、共振器は、通常のコンピュータにおけるデータバスと同様の役割をする。
 2つのダイヤモンド間の結合は、選択的にONOFFできる。「2つのダイヤモンドは、一定角度で互いに対して回転する。さらに、磁場を印加すると、方向が重要な役割を果たす。両方のダイヤモンドが、磁場内で同じ角度で整列していると、それらを量子物理学を用いて結合できる。他の磁場方向では、結合なしで個々のダイヤモンドを調べることができる」と論文の筆頭著者、Thomas Astnerは説明している。
(詳細は、www.tuwien.ac.at)