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現代の錬金術、発光性鉄分子を創造

April, 4, 2017, Lund--スウェーデン、ルンド大学(Lund University)の研究グループは、発光できる鉄ベースの分子を初めて作製した。これは、例えば太陽電池、光源、ディスプレイなど、安価で環境にやさしい材料の開発に寄与する。
 50年以上前から、化学は金属ベースの色素分子を開発してきた。アプリケーションは、ディスプレイや太陽電池など多様。これは、鉄のように一般的で環境にやさしい金属であることが理想ではあるが、多くの試行にも関わらず、今日まで、発光が可能な鉄ベースの色素分子を開発できたものは誰もいなかった。世界中の研究者が、したがって、代わりに様々な希土類、貴金属、例えば、比較的簡単に所望の特性が得られるルテニウムなどに頼らざるを得なかった。
 最先端の分子設計により、ルンド大学の研究グループは、ルテニウムベースの物質によく似るように、鉄ベースの分子の電気特性を操作することに成功した。
 そうすることにより、初めて鉄ベースの色素分子を作製した。これは、光を捉えるだけでなく、それに続いて多様な色の光を放出することができる。光の放出は達成が非常に難しい。したがって、新しい鉄分子がオレンジ光を出すことを示した研究チームの成果が極めて重要である理由がここにある。
「中世の錬金術師は他の物質から金を作ろうとして失敗した。われわれは、ルテニウムの特性に似た特性を鉄に与えることで、現代の錬金術に成功した」と同大学、化学教授、Kenneth Wärnmarkはコメントしている。
 Natureに発表された研究では、鉄錯体が、光吸収と発光状態で記録を破る寿命、100ピコ秒を示したと報告している。一見、想像できないほどの短い時間間隔であるが、それは全く十分である。
「化学の世界では、分子が発光するには十分な時間である」とVilly Sundström化学教授は言う。
 これらの成果は、発光材料として見込みのある将来のアプリケーションに向けた重要なステップである。例えば、照明やディスプレイ、太陽電池の光吸収体や太陽燃料を生み出す光触媒などである。この目標に達するには、新たな、さらに改善された分子を開発する継続的な開発が必要である。