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光で強誘電体中の水素原子を動かし、分極を高速に制御

March, 10, 2017, 東京--クロコン酸結晶はクロコン酸分子同士が水素結合によって結びつけられた有機強誘電体であり、特に、常誘電から強誘電への転移温度(>400K)が高いことや、強誘電分極の値が大きいことからキャパシターなどの有機デバイスの材料として注目を集めている。
 研究グループは、同物質にフェムト秒パルス光を照射すると、強誘電分極が1ピコ秒(ps)以内という極めて短時間で減少し、その後、10pmの時間スケールで回復する現象を見出した。さらに、理論的な解析により、この現象が、水素原子の移動とクロコン酸分子のπ電子系の変化による微視的な分極反転に基づくことを明らかにした。
 研究は、光誘起による強誘電分極反転を実験と理論の両面から解明したものであり、有機強誘電体を利用した高速の光スイッチ、光変調素子、光メモリーなどの開発につながると期待される。
 研究では、まず、フェムト秒パルス光を強誘電体に照射し、その後の分極の時間変化を第二高調波発生(SHG)という手法を用いて観測した。その結果、例えば、光子エネルギーが3.2eVのパルス光を照射した場合、強誘電分極が1ps以内という極めて短時間で減少し、その後、約10psという短時間で回復することを確かめた。次に、そのような分極変化がどのような機構によって引き起こされるかを解明するために、密度汎関数理論に基づいたクラスター計算を行い、光が照射される前の電子状態(基底状態)と光が照射されたあとの電子状態(励起状態)を調べた。
 その結果、光照射によって、まずクロコン酸分子中のπ電子が励起され、次にそのπ電子励起が引き金となってプロトンが移動、それが次々と連鎖することで1光子あたり10分子以上にわたる領域でプロトンが直線的に連なって移動することが分かった。この連なった移動の方向は元々の強誘電分極の方向と逆となるので、全体としては分極値が減ることになり、上記の実験結果を説明できる。
 研究グループは、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の岩野薫研究機関講師、東京大学大学院新領域創成科学研究科の岡本博教授(兼産業技術総合研究所 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 有機デバイス分光チーム ラボチーム長)、宮本辰也助教、産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センターの下位幸弘研究チーム長他で構成されている。
(詳細は、www.jst.go.jp)