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NTT、100万ビット規模の量子コンピュータ実現に向けた新手法を確立

March, 19, 2014, 東京--日本電信電話(NTT)は、光格子中に束縛された約100万個の原子に対して量子コンピュータのリソースとなる大規模な量子もつれ状態を高精度かつ高速に生成する手法を世界で初めて確立した。
この成果により、量子コンピュータ実現に向けて重要な課題となっている、量子ビットのサイズ拡張性やエラーの低減を図ることが可能となることから、100万ビット規模の量子計算が実現できる可能性が大きく広がったと言える。
NTT物性科学基礎研究所及びNTTセキュアプラットフォーム研究所は、冷却原子の研究技術・量子情報処理の研究技術の強みをコラボレーションした研究により、量子コンピュータの計算リソースとして用いることの出来る、大規模な量子もつれ状態を光格子中に束縛された原子に対して高精度(理想的なもつれ生成に対して99%以上の一致度合い)かつ高速(~1ms)に作る手法を世界で初めて確立した。これまでは、量子もつれの生成において、精度よくゲート操作をしようとすると遅くなってしまい、速くゲート操作を行おうとすると精度が悪くなるというトレードオフがあった。また、大規模量子もつれ状態を生成しようとすると複数の量子ビット間でクロストーク(混線)が起こり、エラーが大きくなるという課題があった。今回、両研究所は、レーザ光やその強度の調整により光格子を巧みに設計することで精度と速度のトレードオフ及びクロストークの問題も解消した高精度、高速かつサイズ拡張性のある量子もつれを生成する手法を確立した。これにより、100万ビット規模の量子計算の実現可能性が大きく広がった。

技術のポイント
(1)量子ビットに光格子中の原子を適用
光格子は、レーザ光で作られた人工の結晶と見なすことができ、欠陥や不純物のない理想的な結晶になっている。この結晶は光の波長(<1μm)程度の間隔の周期的な構造を持ち、その中に1個ずつの原子を安定して閉じ込めることができる。現状の技術では1辺100μm以下の3次元空間に、約100万個の原子を閉じ込めることが可能。この原子1つひとつを量子ビットとして用いることで、高い集積性及び均一性が得られる。

(2)高精度、高速度、サイズ拡張性を兼ね備えた量子もつれ生成方式
量子ビットのエラーを少なくするには、他の量子ビットと接触しない状況にすることが望ましいが、量子ビット間に量子もつれの生成を試みると、なんらかの接触が生じ、その際に望まないエラーが生じてしまう課題があった。量子ビット間を仲介する物理的状態を1つだけに絞り、かつこれを補助状態として積極的に有効活用する新しい手法により、高精度の量子もつれゲートを作成することに成功した。振動同期法により精度-速度トレードオフを解消し、対制御法によりクロストークの起きないよう並列に量子もつれを生成し、さらに、エラー除去法によりエラーを欠損に転化することでさらなるエラー耐性を得ることが出来た。
この生成方式の特筆すべき点は、レーザ光(やマイクロ波など)の照射やその強度の調整など、確立されている技術を組み合わせて容易に実装できるシンプルなものであること。また、現状のサイズ限界(約100万個)は原子の束縛技術に依存しており、今後さらに大量の原子が束縛可能になれば本方式は同じように適用できる。

(3)厳密な数値計算技術による性能確認
上の生成方式について、第一原理的なモデル化と厳密な数値計算によって性能を確認。光格子中に束縛された冷却原子系はクリーンで理想的な物理系のため理論数値計算との整合性が非常に高くなることから、この方式を実験で忠実に実現できることが期待できる。
NTTは、この手法による大規模量子もつれ生成の実証実験を行うことを目標に、今後具体的な実験装置や実施条件などの検討を進める。並行して、原子の個別測定に対応していくとともに、3次元に比べて比較的に個別測定が容易な2次元光格子を生成のうえ、今後5年以内に1万ビット程度の測定型量子コンピュータが実現できるよう研究開発に取り組む。その後は、3次元光格子・100万ビット程度への大規模化を目指す。
(詳細は、Physical Review Letters電子版(3月17日付)に掲載)