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Science/Research 詳細

テラヘルツ光でガラスの普遍的励起ボソンピークの検出に成功

January, 6, 2017, つくば--筑波大学と立命館大学などの研究グループは、身近な糖類であるグルコース(ブドウ糖)ガラスに対し、テラヘルツ時間領域分光を行い、ボソンピーク(BP)励起を観測することに成功した。BPは、どんなガラスにもTHz帯に普遍的に現われる。テラヘルツ光でBPを視るという新しい「目」を得ることによって、ガラスの未解決問題とされるBPの起源解明に大きく貢献できることが期待される。
 BPの起源の候補は諸説あり、永らく議論の対象となっているが、近年有力とされているのは、「音響フォノンの終わり」説。研究では、吸収係数αを周波数νで2度割った「α/ν2」のスペクトルにBPが明瞭に現われることを示し、ガラスの音響フォノンの終わりをTHz光で検出できることを見出だした。
 ガラスのBPは、ガラスの中距離構造のサイズ、即ち結晶における「ユニットセルのサイズ」に対応する大きさを示しており、これはマクロな物理量である密度やずり弾性率との相関がある。THz光による「ボソンピークイメージング」を行えば、非接触な密度マップ評価などのTHz光の新たな応用が期待される。
 また、BPの検出法として良く知られた方法にラマン分光がある。研究では、THz分光とラマン分光を高精度に行い、それらのスペクトルの「比」をとることによって、「比光振動結合定数」というBP評価の新しい手法を提案した。これにより、研究対象のグルコースガラスのTHzスペクトルが、従来提案されていた理論モデルから逸脱するという異常を発見した。この異常は、グルコースのみで観測されるものではなく、何らかの新しいガラスのカテゴリーの存在を暗示し、その起源解明はBPダイナミクスの本質の理解にも繋がる。これは、赤外(THz)・ラマン分光のスペクトルをそれぞれ単体で見た場合には気付かず、両者の高精度スペクトルを比較することによって初めて得られた知見。
(詳細は、www.tsukuba.ac.jp)

 研究グループの構成は、筑波大学 数理物質系の小島誠治教授、森龍也助教、数理物質科学研究科の壁谷幹俊(博士前期課程1年)、立命館大学の是枝聡肇教授、藤井康裕助教、及び韓国Hallym大学のJae-Hyeon Ko教授。