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テラヘルツ光による黒色ゴム材料の非破壊検査手法を開発

January, 5, 2017, 東京--JST 研究成果展開事業において、慶應義塾大学 理工学部 物理学科の岡野真人専任講師と渡邉紳一准教授の研究グループは、高速で高精度なテラヘルツ偏光計測装置を用いた新しい黒色ゴム材料の非破壊検査手法の開発に成功した。
 カーボンブラックが配合された黒色ゴム材料は、タイヤや防振ゴムなどに利用されており、その内部状態を検査する技術の確立が必要だが、黒色ゴムは、人間の目が感じる可視光や近赤外線、中赤外線も透過しないため、光を用いてその内部状態を非破壊で観察することは極めて困難とされてきた。
 幅広い光スペクトルの中で、電波と光の境界にあるテラヘルツ光だけが黒色ゴム材料に対して透過性をもつことに着目し、添加されたカーボンブラック凝集体の並び方を偏光測定によって推測できることを実証した。さらに、カーボンブラック凝集体の整列の様子から、材料が「どちらの方向に」、「どの程度」ひずんでいるかを推測することにも成功した。
 この分析手法は、外からの力によるゴム材料変形を推測できることを示しており、これまで光では内部調査ができなかったタイヤや防振ゴムの新しい非破壊検査ツールとして期待される。
 研究では、幅広い光スペクトルの中で、テラヘルツ光だけが黒色ゴム材料に対して透過性をもつことに着目。テラヘルツ光に対する黒色ゴム材料の屈折率は、黒色の起源にもなっているカーボンブラック添加物の並び方によって決定され、偏光測定によってある方向への屈折率が大きいこと(異方性)がわかれば、その並び方を推測できることを実証した。
 ゴムは外からの力が加わると、異方性をもったカーボンブラック凝集体の並び方が変化し、引っ張った方向に沿って整列するようになる。研究では、テラヘルツ偏光計測を用いることにより、引っ張ったゴム材料について、①「どの方向」に屈折率が大きいか(屈折率主軸角度)を決定。②また、屈折率主軸方向の屈折率とそれと垂直方向の屈折率を比較することで「どの程度」の屈折率差(複屈折)があるかを決定。③以上のテラヘルツ光によって観測される「屈折率主軸角度」と「複屈折」の計測結果が、カーボンブラック凝集体の整列の仕方に関連することを見いだした。
 これらの結果から、テラヘルツ光を用いて、ゴム材料内部でカーボンブラック凝集体が「どちらの方向に」、「どの程度」整列しているかを知ることができ、カーボンブラック凝集体の整列の様子から、材料が「どちらの方向に」、「どの程度」ひずんでいるかを推測することができる。ゴム材料に対するテラヘルツ光の透過率は比較的大きいので、これまで到達できなかったゴム深部のひずみの様子も調査できることが期待できる。
(詳細は、www.jst.go.jp)