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バークリーLab、レーザとアンチレーザを統合

December, 2, 2016, Berkeley--エネルギー省(DOE)のローレンスバークリー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)は、レーザとアンチレーザの両方として動作する単一デバイスを初めて作製した。また、研究チームは、これらの対立する機能を通信帯の周波数で実証した。
 研究成果は、レーザ、増幅器、変調器、アブソーバ、ディテクタとして柔軟に動作する新しいタイプのデバイス開発の土台となるものである。
 「コヒレント光増幅および同じ周波数での吸収の両方で、われわれが達成した単一光キャビティでは、これらの2つの状態は根本的に相互に対立するので直観に反する現象である。これは、光通信における光パルスの高速変調にとって重要である」とバークリーLabの材料科学部門の主席研究者、Xiang Zhangは説明している。
 アンチレーザと言う概念、つまりコヒレントパーフェクトアブソーバ(CPA)は、レーザの機能を覆すものとして最近登場してきた。光ビームを強力に増幅する代わりに、アンチレーザは入力コヒレント光ビームを完全に吸収することができる。
 アンチレーザは、「雑音がある」インコヒレント背景の只中で弱いコヒレント信号を取り出すことができるので、それは極めて高感度の化学的、生物学的検出器として使うことができる。
 両機能を持つことができるデバイスはフォトニック集積回路の作製のための貴重なビルディングブロックになる、と研究者は見ている。
 研究チームは、デバイス作製のために高度なナノファブリケーション技術を利用して利得材料と損失材料の824繰り返しペアを造った。サイズは200µm長、1.5µm幅である。
 利得媒体はInGaAsPでできている。ゲルマニウムと組み合わせたクロムが損失媒体となる。パタンを繰り返すことで共振システムができ、その中で光は前後に振動して増幅または吸収が起こる。その利得-損失繰り返しシステムに光を通すと、知識に基づいた推論では、光は増幅と吸収の等量を経験して光強度は変わらないと考える。しかし、このシステムがパリティタイムシンメトリ(対称性)の条件を満たしているなら、これは事実ではない。この点は、デバイス設計では需要な要件である。
 パリティタイムシンメトリは量子力学から進化した概念。パリティ演算では、位置が入れ替わる、左手が右手に、その逆になる。
 ここで時間反転動作を加える。オプティクスでは、増幅利得媒体の時間反転は吸収損失媒体である。
 パリティと時間反転動作の両方を行って元の設定に戻るシステムは、パリティタイムシンメトリの条件を満たしているとされる。
 アンチレーザ発見後すぐに研究チームは、パリティタイムシンメトリを示すシステムは、同じ場所で同じ周波数でレーザとアンチレーザの両方をサポートすることができると予言した。研究グループが作製したデバイスでは、利得と損失の大きさ、ビルディングブロックのサイズ、通過する光の波長が組み合わさってパリティタイムシンメトリの条件を作る。
 システムが釣り合っていて利得と損失が等しい時、光の増幅も吸収も起こらない。しかし、条件が揺らぐ、つまり対称性が敗れると、コヒレント増幅や吸収が観察できる。
 実験では、同じ強度の2つの光ビームをデバイスの反対側に向けて入れた。1つの光源の位相を微調整することによって光が増幅または吸収材料でより多くの時間を費やすかどうかを制御することができた。
 光源の位相を速くすると利得媒体と増幅コヒレント光の放出、つまり発振モードに有利な干渉パタンになる。1つの光源の位相を遅くすると、反対の効果が得られ、損失媒体、光ビームのコヒレント吸収、つまりアンチレーザモードで使う時間が長くなる。
 2つの波長の位相が等しく、両者が同時にデバイスに入ると、増幅も吸収も起こらない。各領域で費やす時間が同じだからである。
 研究チームは、光通信で使用される波長帯の中にある1556nm付近の波長ターゲットにしている。