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産総研と北大、銀-リン酸カルシウム複合粒子の合成技術を開発

November, 24, 2016, つくば--産業技術総合研究所(産総研)ナノ材料研究部門ナノ粒子構造設計グループ 中村真紀主任研究員、大矢根綾子 主任研究員らと、北海道大学大学院歯学研究科 宮治裕史講師らは、パルスレーザ光を利用して簡便・迅速に銀ナノ粒子を含むリン酸カルシウムサブマイクロメートル粒子を合成する技術を開発し、この粒子の歯科治療用材料としての可能性を実証した。
 この合成技術では、カルシウムイオン、リン酸イオン、銀イオンの混合水溶液に、比較的弱いパルスレーザ光を数十分照射するだけで、銀ナノ粒子を多数含むリン酸カルシウムサブマイクロメートル粒子を得ることができる。得られた粒子は、う蝕(虫歯)や歯周病の原因となる口腔細菌に対して抗菌作用を示し、狭い空間での除菌を必要とする歯科治療などへの応用が期待される。
 今回、産総研の持つ、レーザ光を利用したサブマイクロメートル粒子の合成技術を応用し、銀ナノ粒子を含むリン酸カルシウムサブマイクロメートル粒子(複合粒子)の簡便・迅速な合成技術を開発した。銀イオンをレーザ光吸収剤として用い、反応液への添加濃度を調節することで、リン酸カルシウムのサブマイクロメートル粒子の生成反応と、銀イオンの光還元による銀ナノ粒子の析出反応を同一バッチ内において進行させ、複合粒子の一段階合成を実現した。安価な無機試薬から得られるカルシウムイオン、リン酸イオン、銀イオンの混合水溶液(4 mL)に、比較的弱いナノ秒パルスレーザ光(355 nm、30 Hz、200 mJ/pulse/cm2、ビーム径8 mm、パルス幅8-10 ns)を20分間照射するだけで、複合粒子が合成できた。

 今回開発した技術では、原料イオン溶液を混合した直後に銀を含むリン酸カルシウムの不定形粒子が生成し、それらがパルスレーザ光を吸収して液中で瞬間的に(10ns程度)加熱されて溶融した結果、球状化したと考えられる。さらに、この粒子中に含まれる銀イオンの光還元により、金属銀のナノ粒子がリン酸カルシウム粒子中に分散して析出し、複合粒子が生成したと考えられる。なお、原料である混合水溶液中の銀イオンの濃度を増加させると、生成する複合粒子中の銀含有量も増加することから、この技術では、複合粒子中の銀とリン酸カルシウムの比率を調節できるといえる。
 今回開発した技術で合成された複合粒子の歯科治療への応用の可能性について基礎的な検討を行った。う蝕や歯周病の原因となる口腔細菌(う蝕原因菌、歯周病菌)の懸濁液に複合粒子を添加したところ、細菌の増殖が抑制され、これらの口腔細菌に対して抗菌作用を示した。また、増殖の抑制は粒子濃度に依存し、粒子濃度が高いほど増殖抑制効果が大きかった。う蝕原因菌の懸濁液に複合粒子を添加して24時間培養したところ、サブマイクロメートルサイズの粒子が観察されなくなった。細菌が産生した酸によってリン酸カルシウムが溶解(カルシウムイオンとリン酸イオンに分解)したと考えられた。リン酸カルシウムが溶解したため、粒子が内包していた抗菌性銀ナノ粒子が多量に放出され、抗菌作用を発揮したと考えられる。なお、口腔細菌が増殖すると、酸を産生して周囲の液性を酸性にし(酸性化)、歯のリン酸カルシウム成分を溶かす(脱灰)ことが知られているが、この複合粒子は、自らが溶解することで、細菌懸濁液の酸性化を抑制することが確認された。すなわち、この複合粒子は、口腔内環境の酸性化を抑制しつつ、歯の主成分であるカルシウムイオンとリン酸イオンを供給して歯の脱灰を防止し、再石灰化を促進する効果を持つと期待され、口腔内環境の保全・改善剤などへの応用が期待される。
 この技術の詳細は、Acta Biomaterialia誌にオンライン掲載された。