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黒鉛を超伝導にするカリウム原子の並ぶ様子を可視化

November, 14, 2016, 奈良--奈良先端科学技術大学院大学の松井文彦准教授と大門寛教授は高輝度光科学研究センターの松下智裕主席研究員らとX線を照射したときに試料から飛び出す電子の角度分布(光電子ホログラム)がいっぺんに測定できる独自の2次元表示型電子分析器を大型放射光施設SPring-8ビームラインBL25SUに設置し、光電子ホログラムから正確な原子配列を直接可視化する方法(光電子ホログラフィー法)を開発、この手法を用いて、黒鉛の蜂の巣格子間に挟まれているカリウム原子周辺の原子配列の再生に成功した。
 さらに物質・材料研究機構の濱田幾太郎主任研究員と大阪大学の森川良忠教授・濵本雄治助教は黒鉛層間化合物に適した理論計算手法とソフトウェアを開発し、光電子ホログラムから得た原子配列モデルに基づき、理論計算でこの超伝導化合物のより精緻な原子構造を決定した。その結果、カリウム原子が挿入された表面第1層の黒鉛層間距離は 0.537nmと求まった。
 超伝導を引き起こす原因となる不純物原子の局所構造を明らかにしたこの成果は、ありふれた黒鉛が超伝導という興味深い性質を示す仕組みを理解し、新たな超伝導材料を探索する上で重要な知見となる。またこの手法は物性の基礎研究や新規材料の開発における幅広い応用の手掛かりとなる。

今回の研究の意義について研究チームは次のように説明している。
 「最表面数原子層の領域にあるカリウム原子周りの局所構造を可視化することに成功し、カリウムとカルシウムの分布が揺らいでいることを見出した。これらは超伝導転移点を押し上げる謎を解くカギになる。近年、表面や原子数層の膜が超伝導になる例が報告されている。光電子ホログラフィー法による原子配列を直接観察する技術と理論研究は、新たな超伝導材料開発において強力な指針となると期待される」。
 研究成果は、Nature Publishing Groupオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に発表されている。
(詳細は、www.naist.jp)