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位相制御したテラヘルツ波により、トンネル電子をナノ空間で自在に制御

November, 11, 2016, つくば/横浜--横浜国立大学大学院工学研究院・武田淳教授のグループと筑波大学数理物質系・重川秀実教授グループの研究チームは、位相制御した単一サイクルのテラヘルツ波を走査トンネル顕微鏡(STM)の探針・グラファイト試料間の1ナノメートル(nm)のギャップに照射することにより、250フェムト秒(fs)という極短時間に数万〜数10万個の電子を自在に探針・試料間で行き来させることに成功した。これは、超高速で動作する1nmの極小トランジスタを実現したことに対応する。この成果は、次世代量子ナノデバイス、プラズモニックデバイスの進展に大きく貢献するものである。

研究内容と成果
研究では、幾何光学的手法を用いることにより、発生したコサイン型のテラヘルツ波の位相(φ=0)をφ=π/2(サイン型)、φ=π(反転したコサイン型)に変換することに成功した。これらは、光路に1対の円筒形レンズあるいは球形レンズを挿入することにより簡単に実現できる。この位相制御したテラヘルツ波をSTMの探針と試料間の〜1nmのギャップに照射することにより、電子移動を自在に制御することに成功した。すなわち、コサイン型のテラヘルツ波を照射すると探針から試料へ、反転したコサイン型テラヘルツ波を照射すると試料から探針に電子は移動する。一方、サイン型を用いると、STMの直流電圧の符号を反転させるだけで何れの方向にも電子は移動する。
 STMの探針増強により、入射したテラヘルツ波の電場強度は100,000培にも増強される。増強して得られた最大電場強度(〜160MV/cm=〜16V/nm)はこれまで報告されている最大強度よりも〜2倍大きい。単一サイクルの巨大な電場が、探針と試料間のポテンシャルを250フェムト秒(fs)という極短時間で瞬間的に変調するため、数万〜数10万個という驚くほど多くの電子を所望の方向に一気に流すことができる。

研究成果—位相制御テラヘルツSTM—は、電子を超高速で制御する新規のプラットフォームを提供するものであり、将来のナノエレクトロニクス開発に新たな方向性を示したものである。更には、STMは原子分解能を持つことから、今回開発した手法は、近い将来、「原子スケールかつ超高速で物質の持つ諸特性を自在に制御できる強力なツール」になるものと期待される。
(詳細は、www.tsukuba.ac.jp)