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UV光処理でフォトディテクタを広帯域デバイスに

October, 31, 2016, Lyon--フォトディテクタは、一般にある狭い帯域内の光にしか感度がないが、これは製品開発者にとって種々の問題の原因になる。モスクワ物理学・技術研究所(MIPT)の研究者は、中国およびサウジアラビアの研究者とともに、こうした問題への対処方法を見出した。Advanced Functional Materialsに発表された論文によると、通常のフォトディテクタをUV光処理することで、それを広帯域デバイスに変えることができる。
 長春応用化学研究所(中国)とキングサウジ大学(サウジアラビア)を含む研究チームは、内部光電効果に基づいたポリマフォトディテクタを研究した。つまり、光の影響下にあるポリマ内の電子の再配分が、結果的に電気伝導性になる。有機材料ベースのフォトディテクタは、従来の無機材料に対して多くの利点がある。ローコスト、製造容易性、物理的柔軟性など。デバイスのある要素表面との相互作用により、UV照射がその感度を変えることが分かった。
 研究チームは、酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子を含むポリマベースのフォトディテクタにUV光を30秒照射する実験を行った。その結果、フォトディテクタは非常に広いスペクトル応答を持つフォトディテクタになった。最大外部量子効率(EQE)は140,000%、UV処理前の計測では30%だった。フォトディテクタのEQEは、重要な性能指数であり、「除去された」電子の数と入射フォトンの数の比率で定義される。照射前は10フォトンがわずか3個の電子を生成したが、UV処理後は同じ数のフォトンが14,000の光電子を生成した。しかし、暗電流の増加によりデバイスのノイズ量も大きくなった。暗電流は、デバイスにフォトンが全く入ってこない場合でもディテクタに生ずる。 
 研究チームは、ディテクタに対するUV光の大きな効果は、ZnO分子から酸素分子が分離されるためであると考えている。フォトディテクタの製造中、酸素分子は半導体粒子の表面に吸収され、それによって酸素が伝導帯からの電子を捕らえる。その結果、捕らえられた電子は、もはや荷電キャリアとして働けなくなる。このことの意味は、ZnO層が、電子輸送に影響する障害となるということである。
 UV光処理は、価電子の一部を伝導帯に移行させる。これはZnO粒子によって吸収された照射が原動力。解放された電子は荷電として機能し、バイアス電圧-0.5Vで60pW/㎝2の計測可能な最小光パワー強度でも光電流を生成する。
 「こうしてポリマベースのフォトディテクタを高感度ブロードバンドデバイスに変えることができる。プロセスそのものは迅速、安価、効率的である。これは実用的アプリケーションにとっては重要である」とMIPT分子エレクトロニクスセンター長、Vadim Agafonovはコメントしている。
 論文によると、ブロードなスペクトル応答を達成するためには、製造中にUV光でフォトディテクタを一度処理するだけで十分である。さらに、そのデバイスの新たに獲得された特性は、製造工程が終わっても変わらない。半導体層は、それを酸素から保護するアルミ層で封止されることになるからである。
 研究チームは、デバイスのハイパフォーマンスとワイドスペクトルレンジを犠牲にすることなく、UV光照射後に起こる「副作用」を除去することを考えている。提案された方法で処理されたフォトディテクタは、イメージングから大気センシングまで、どこでも使える。
(詳細は、www.mipt.ru)