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筑波大学など、電子の運動を光の周期より短い時間で操作することに成功

September, 1, 2016, つくば--日本とスイスの共同研究グループは、パルス光を誘電体に照射するとき、光の周期よりも短い時間で誘電体の光学的性質が変化することを示した。
 研究グループは、スーパーコンピュータ「京」を用いた大規模計事機シミュレーションにより、光学的性質の超高速変化が、電子のエネルギーバンド内の運動に超因することを明らかにした。この成果は、光と物質の相互作用に関する基礎的知見を与えるもので、将来実現が期待される光波を用いた新奇なエレクトロニクス技術に向けて重要な意味をもつ貢献である。
 研究グループは、筑波大学計算科学研究センター矢花一浩教授と佐藤駿丞学振特周研究員は、チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)の超高速レーザ物理グループ、東京大学大学院工学系研究科附属光量子科学研究センターの篠原康研究員で構成。

研究肉容と成果
今回行った実験では、2つのレーザパルス光を50nm厚ダイヤモン薄膜に同時に照射する。1つめは、強い数フェム秒(fs)の赤外線レーザパルス光。この光の電場は、ペタヘルツの4割程度の振動数を持ち、パルス内で5回ほど振動する。1回の振動にかかる時間は2.7 fs程度。この光電場がダイヤモンド中の電子を揺する。もう1つのレーザパルス光を用いて、この揺すられた電子の運動を調べる。2つめのレーザパルス光は、最初のものよりはるかに短く0.25 fs程度の長さ。2つめのパルス光が、ダイヤモンドによりどのように吸収されるかを調べることで、1つめのパルス光が揺すった電子の運動を捉えることがでる。実験による測定では、1つめのレーザパルス光のもつリズムで、2つめのレーザパルス光の吸収に変化が現れるという結果が得られた。
 この吸収の変化が、電子のどのような運動に起因するのかを明らかにするために、第一原理量子シミュレーションを行った。スーパーコンビュータ「京」を用いて、実験の設定と正確に一致するシミュレーションを行い、実験で測定された2つめのレーザパルス光の吸収の変化を、高い精度で再現することができた。実験と比べてシミュレーションの優れた点は、吸収の変化がどのような電子の運動に起因するのかを、さまざまな効果をオン・オフすることで調べられる点である。その結果、吸収の変化がダイヤモンドの2つのエネルギーバンド内の電子の運動に起因し、フランツーケルディッシュ効果と呼ばれるメカニズムによることが明らかとなった。
 今回の研究は、ベタヘルツの振動数を持つパルス光により物質中の電子がどのように運動するかを明らかにした。ペタヘルツで動作するエレクトロニクスを実現するためには、まだ多くの研究が必要とされるが、そのための重要な一歩となる成果である。
(詳細は、www.tsukuba.ac.jp)