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超高精度の「光格子時計」で標高差の測定に成功

August, 18, 2016, 東京--JST 戦略的創造研究推進事業および文部科学省 光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発事業において、東京大学 大学院工学系研究科の香取秀俊教授、国土地理院の研究グループは、直線距離で約15km離れた東京大学と理化学研究所に光格子時計を設置し、2台の時計の相対論的な時間の遅れを高精度に測定することで、2地点間の標高差を5㎝の精度で測定することに成功した。
 光格子時計は、香取教授が考案した高精度な原子時計で、次世代の「秒」の定義の有力候補として世界中で研究されている。「秒」の定義に求められる時計の「再現性」を担保するためには、その時計の「振り子の振動数」を他の研究機関に伝送し、複数の研究機関で「振り子の振動数」の同一性を検証することが重要。一方、アインシュタインの一般相対性理論によれば、異なる高さに置かれた2台の時計を比較すると、低い方の時計は地球重力の影響を大きく受け、ゆっくりと時を刻む。この結果、超高精度な時計の遠隔比較では、時計の再現性の確認にとどまらず、従来の時計の概念を超える「相対論的な効果を使った標高差測定(相対論的測地)」という応用を拓く。

研究グループは、先行して開発した「低温動作ストロンチウム光格子時計」を東大に1台、理研に2台設置して光ファイバでつなぎ、遠隔地比較を行った。同じ高さに置かれた理研の2台の光格子時計の振り子は1×10-18で振動数が一致した。一方、東大の時計の振り子は理研よりも1652.9×10-18だけゆっくり振動し、これから2地点の標高差1516㎝が算出された。この「相対論的測地」の結果は、国土地理院が行った水準測量と5㎝の誤差範囲内で一致し、世界で初めて遠隔地時計比較によるセンチメートルレベルの標高差計測に成功した。

水準測量では、短区間の測定を繰り返して測量するため、長距離では誤差が累積するが、時計比較の精度は距離が長くなっても累積誤差は生じない。論文では、各地に設置した光格子時計が、将来、新たな高さ基準「量子水準点」を形成し、それらをネットワーク化する「時計のインターネット」の手法を提案している。これにより、火山活動による地殻の上下変動の監視や、GNSS(全球測位衛星システム)と補完的に利用できる超高精度な標高差計測システムの確立など、安全・安心に向けた社会基盤への実装も期待される。
(詳細は、www.jst.go.jp