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白色を生成するナノクリスタルが、照明と通信システムを統合

August, 16, 2016, Thuwal--KAUST (King Abdullah University of Science and Technology)の研究チームは、青色から白色光を生成するナノ結晶材料を開発した。
 現在、WiFiとブルートゥースが確立された技術であるが、情報伝送に使用する電磁波の波長を短波長化することでいくつかのメリットが得られる。
 いわゆる可視光通信(VLC)は、規制がなく潜在的にエネルギー効率が優れている電磁スペクトルの一部を利用する。VLCは、情報伝送と照明およびディスプレイ技術を統合する方法を提供する、例えば、天井の明かりを使ってラップトップをインターネット接続する。
 そのような多くのVLCアプリケーションでは、白色光を発するLEDsが必要になる。これらは通常、青色光を発するダイオードとリンを組み合わせることで生成される。リンは、この放射光の一部を赤や緑の光に変換する。しかし、この変換プロセスは、LEDのON/OFFスイッチング速度に追随できるほどに速くない。
「このような方法で生成される白色光を使うVLCは、1秒に100万ビット程度に制限される」とKAUSTの電気工学教授、Boon Ooi氏は指摘する。
 その代わりに、同教授とKAUST機能ナノマテリアル研究所准教授、Osman Bakrの研究チームは、より高速のデータレートが可能になる、ナノクリスタルベースのコンバータを利用する。
 研究チームは、サイズが約8nmのセシウム臭化鉛のナノクリスタルを作製した。使用したのは、従来の窒化物蛍光体を含む、簡単な、コスト効果が優れた溶液ベースの方法。青色レーザ光が照射されると、そのナノクリスタルは緑色を発光し、窒素が赤色光を発光する。これらを合わせると暖白色になる。
 研究チームは、フェムト秒過渡分光法を使ってその材料の光学特性を評価した。セシウム臭化鉛における光学プロセスが約7ナノ秒(ns)のタイムスケールで起こることを明らかにすることができた。これは、発光を491MHzの周波数で変調できることになり、リンを使うよりも40倍高速で、1秒あたりに20億のレートでデータを伝送できる。
「高速応答は、一部は結晶サイズによるものである。空間閉じ込めが、電子とホールの再結合を促進し、フォトンを放出させる」とBakrは説明している。
 重要な点は、ペロブスカイトナノ構造を使って生成された白色光は、現在のLED技術に匹敵する品質であったということである。
 Ooi氏は、「半導体レーザを使って生成される白色が、エネルギー効率のよい照明として、いずれLED白色電球に取って代わると考える」とコメントしている。