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回折限界を超えて望遠鏡の角分解能を改善する新技術

July, 15, 2016, Washington--望遠鏡の角分解能は、分離したものとして分解できる2つの物体間の最小角。高い角分解能の望遠鏡では、それらの物体は極めて密接しているが、それでもまだはっきりと見える。
 Optics Lettersに発表された論文で、研究チームは望遠鏡の回折限界を回避する方法を提案している。
 地上設置の望遠鏡の実用的な角分解能は、適応型オブジェクト(AO)システムを用いることで向上可能である。これはリアルタイムで、地球の大気のぼやけ効果を補償し、画像を回折限界の分解能に回復する。とは言え、この補正はますます複雑になる。ケンブリッジ大学の適応型オプティクスの専門家、Aglaé N. Kellererは、「1989年、最初の天文プロトタイプは、19の補正素子を持っており、サンプリングレートは150-Hzだった。現在のシステムは、数千の補正素子を持ち、サンプリングレートは1kHz。これが限界だ」と話している。
 Kellererと論文の共著者、テクニオンイスラエル技術研究所のErez N. Ribakは、顕微鏡の角分解能を回折限界を超えて改善できる可能性のある提案をしている。ここでは、フォトン増幅と、自然放出フォトンに対する誘導放出フォトンの統計的特性との組み合わせを用いる。
 天体から放出されるフォトンを考える。フォトンが実際に、所与の顕微鏡で検出される前には、その位置で分かっていることのすべては、そけは天体に集中している巨大な球面波のある点に存在し、遥々望遠鏡まで広がってくるということである。しかし、望遠鏡のディテクタがそのフォトンを検出するとただちに、フォトンの経路は望遠鏡の開口部で制限する領域に狭くなる。ハイゼンベルクの不確定性原理の示すところでは、フォトンの経路は今ではよくわかっているので、その運動量における対応する不確定性は増大しなければならない。これが、望遠鏡の分解能を制限している。
 研究チームによると、この制限は、独立したフォトンにだけ適用される。一連のコヒレント、エンタングルフォトンでは、制限はもっと小さくできる。これが研究チームの提案の要諦である。「われわれは、天文学における回折限界を克服するためにフォトン増幅、誘導放出を使うことを提案している」。
 特に、研究チームは、励起された原子は望遠鏡アパチャとそのフォトンディテクタの間に挿入できると提案している。天文観察されるフォトンが望遠鏡に入ると、それは同等のフォトンの放出を誘導する。「これらのフォトンは同時にディテクタに到達し、回折パタンに広がる。入力フォトンが100のフォトンの放出を誘導すると、フォトンの入射方向の判定精度は10倍向上する」とKellererは説明している。
 誘導放出には、ノイズに寄与する自然放出が伴う。そのため、以前は、研究者たちは天文学のイメージング改善にフォトン増幅を使用する考えを放棄していた。しかし、KellererとRibakは、一定のサイズを上回る誘導フォトンバーストだけを利用することを提案している。小さなフォトンバーストを生成する天文観察されるフォトンは、より大きなノイズ成分を持つので放棄され、これにより全体としてノイズ低減となる。「これにより、回折限界を超えることができる」とKellererは説明している。
 提案技術の潜在的な欠点は、生成される画像の感度損失である。「それは避けられないことである。しかし、もし代償なしで回折限界を克服する手段が得られるなら、それはハイゼンベルクの不確定性原理に反することになり、明らかに間違いである」と同氏は認めている。