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テラヘルツ光照射による高次構造変化を実現

June, 9, 2016, 和光--理化学研究所(理研)光量子工学研究領域テラヘルツイメージング研究チームの保科宏道上級研究員らの共同研究グループは、高強度の「テラヘルツ(THz)光」の照射により、高分子の高次構造を変化させることに成功した。
 THz光は、電波と光の中間の周波数の電磁波。近年、世界的に光源開発が進み、日本でも非線形光学効果による発生法や自由電子レーザやジャイロトロンなどの高強度THz光源が開発され、それらの装置を活かした応用研究が始まっている。
 THz光の周波数は、分子間に作用する水素結合や、高分子の高次構造の振動運動の周波数に相当するため、高強度THz光の照射は高分子の高次構造やその運動状態を変化させる可能性がある。一方で、プラスチック、ゴム、セルロース、タンパク質などの高分子は、たとえ同じ分子でも高次構造によって物性や機能が異なる。プラスチックでは、結晶化度の違いによって硬さや透明性が変化する。タンパク質では、二次構造や三次構造が変わることによって生体に対する機能が変化する。したがって、高次構造の変化をTHz光によって誘起できれば、高分子の機能や物性を変える新しい手段が生まれると考えられる。
 共同研究グループは、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)のクロロホルム溶液からポリマー膜を作製する際、大阪大学の自由電子レーザによって発生した高強度のTHzパルス光を照射した。その結果、ポリマ膜はTHz光照射時と非照射時では、全く異なる結晶構造を持つことが分かった。高分子中に結晶が占める割合で、高分子の融点や硬さなどの物性を決めるパラメータである「結晶化度」を比較した結果、THz光を照射しなかったポリマー膜に比べて、照射したポリマ膜では結晶化度が20%増加していた。ポリマの結晶化度は、通常熱によって変化するが、今回の実験では温度上昇を1℃以下に抑えた条件でTHz光を照射しているので、THz光と物質の相互作用によりポリマーの高次構造が変化した可能性が高いと考えられる。
 今後、今回の高次構造変化のメカニズムの解明が進めば、光による機能性材料の開発や機能制御など、高分子を対象とした新たなテクノロジーの確立につながると期待できる。
(詳細は、www.riken.jp)