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ミトコンドリアDNA送達を可能にするレーザを使ったナノブレード

May, 23, 2016, Los Angeles--UCLAを中心とした研究チームは、ミトコンドリアDNA病、脳や心臓、筋肉に影響を及ぼす広範なグループの遺伝性疾患について調査する新しい方法を明らかにした。
 新しい方法は、UCLAの研究チームが開発した、細胞膜に穴を開ける技術を利用するもので、Cell Metabolismに発表されている。研究チームによると、このような病気が起こる仕組みと理由についての特定の研究に道を開き、処置の開発への方途を提示する。
 ミトコンドリアは、細胞の「エネルギー発電所」とも言われ、小さな細胞小器官であり、細胞の細胞質の内部、核の外にある。ミトコンドリアは、代謝として知られるプロセスで、細胞のために食物をエネルギーや基礎的構成要素に変換する。
 ミトコンドリアDNAの突然変異、mitDNAは、主に高エネルギーを必要とする組織や細胞に影響する破壊的な病気を引き起こす。mitDNA病でよく知られたものの1つは、レーベル遺伝生視神経症(レーバー病)、これは突然深刻な中心視損失を引き起こす。人のミトコンドリアは母性遺伝であるので、mitDNA病は病気にかかっていない母から子供に受け継がれる。
 「特定mitDNA病は稀であるが、全てのタイプのmitDNA突然変異からのmitDNA病は推定で5000人に1人の割合である」とUCLAジョンソン総合ガンセンタ基礎研究、探索医療ディレクタ、Dr. Michael Teitellは話している。
 同氏は、「細胞へのミトコンドリア送達のわれわれの新アプローチは、いかにして特定のmitDNA突然変異が細胞代謝を変えるかについての理解に新たな可能性を拓くものであり、特定のmitDNA病治療の方法を提供する可能性がある」とコメントしている。
 研究チームによると、健康なmitDNAのミトコンドリアを損傷を受けたmitDNAを持つ細胞に送達することができる。これにより病気の影響を大幅に低減し、病気を除去する可能性もある。
 mitDNA修正を取りまくこのような問題、また他の複雑な問題に対処するためにUCLAの研究チームは新しい精密切断ツールに関して、Pei-Yu (Eric) Chiou機械・航空工学教授と協力した。
 ツール、「光熱(フォトサーマル)ナノブレード」は細胞の外膜に穴を開けて所望の成分を細胞質に加圧送達する、この場合は健全なミトコンドリア。
 「われわれのフォトサーマルナノブレードは、精密切断に超高速レーザ誘起キャビテーション気泡を使い、細胞膜にミクロンサイズの穴を開けることができる。ナノブレードツールは細胞に入ることはないので、このプロセスは細胞を生きたままに保つ。したがって、大きなサイズで、時間をかけて拡散する、ミトコンドリアの送達を非常に効率的に行うことができる」とChiou教授は説明している。
 さらに、ChiouとTeitellは、ナノブレードを高スループットシステムに組み込むアプローチを設計しており、これができるとミトコンドリアのような所望のカーゴ―を1分間に10万の細胞に送り込むことができる。