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メタサーフェス製造技術でホログラム効率化

May, 19, 2016, Cambridge--ハーバードJohn A. Paulson工学・応用科学部(Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences)の研究チームは、コンパクトなホログラムに偏光をプログラムした。このホログラムは、偏光に感度があるナノ構造を使って、入射光の偏光に応じて多様な画像を生成する。この進歩により、不正防止ホログラム、エンタテーメントディスプレイで使用されるホログラムが改善される。
 「この研究の新規性は、ナノテクノロジーを使い、非常に効率的なホログラムを実現したことだ。つまり、画像生成で失われる光は極めて少ない」と論文のシニアオーサFederico Capassoは話している。「入射偏光を使うことで、非常に鮮明な画像を見ることができ、蓄積して読み出せる画像の数も多くなる。偏光はホログラムに別次元を追加し、それを偽造防止やディスプレイのようなアプリケーションで使うことができる」。
 ハーバードの技術開発室は、関連技術も含めてこれを特許申請し、積極的に商機を探っている。
 ホログラムは、デジタル写真のように、対象の周囲の光の場を捉え、それをチップにエンコードする。しかし、写真は光の強度を記録するだけだが、ホログラムは光の位相も捉える。これが、ホログラムが3Dに見える理由である。
 研究チームは、ガラス基板上にシリコンナノ構造パタンを作製した。これがスーパーピクセルとして機能する。個々のスーパーピクセルは、入射光のある偏光状態に反応する。偏光入射光のキラリティに多様に反応するようにナノフィンを設計し配置することによって、ホログラムに一層多くの情報をエンコードすることができる。
 筆頭共著者、Capasso Labの研究者、Antonio Ambrosioによると、キラリティをエンコードできることは、偽造防止などの情報セキュリティで重要なアプリケーションになる。「例えば、キラルホログラムは、偽造者にはわからない特定の偏光を照射したときにのみ一連のある画像を表示するように作ることができる」。
 「将来、違うナノフィンデザインを用いることで、多数の偏光状態を持つ光を使って、さらに多くの画像を蓄積し読み出すことができるようになる」とCapassoは話している。
 このシステムはコンパクトであるので、ポータブルプロジェクタ、3Dムービー、ウェアラブルオプティクスにアプリケーションがある。
 「最近の偏光イメージングシステムは、ビームスプリッタ、偏光し、波長板など、いくつかの連鎖的な光コンポーネントを必要とする。われわれのメタサーフェスは、単一の誘電体層を使って入力偏光を区別することができる。また、ホログラムの中にはレンズ機能を組み込んだものもあり、これによって大きな角度で画像を生成できるようになった。この機能と小型・軽量とを組み合わせることで、ウェアラブルオプティクスアプリケーションに大きな可能性が見いだせる」と論文の筆頭著者、Mohammadreza Khorasaninejadは語っている。