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NIST、ポータブルスケールでレーザパワーを計測

May, 13, 2016, Gaithersburg--米国国立標準技術研究所(NIST)の研究チームは、力検出器のように振る舞うミラースケールに光を反射することによってレーザパワーを計測する新しい方法を実証した。
 奇妙に聞こえるかも知れないが、その技術は簡素で高速、より安価でポータブルであり、製造、軍や研究で使われる高出力レーザを較正する従来の方法の代替となる。
 光パワーは従来、それを電気単位と比較することで計測してきた。研究者は、レーザで被覆したディテクタに照準を定め、ディテクタの温度変化を計測して、同等の熱量を生成するのに必要な電気出力を確定する。この方法は非常に正確であるが、ハイパワーレーザでは困難である。大型の吸収材を緩慢に加熱し冷却する必要があるからである。ほとんどの吸収材は、切断や溶融で使われるレーザの破壊的なパワーに耐えられない。
 レーザパワーは、スケールが計測する基準物質、あるいは同等の力と比較することで計測できる。この考えはレーザと同じくらい古いが、実用になったのは最近のことである。出力4~6kWの産業用切断ツールのような大型レーザ、出力10~100kWの軍用レーザがますます一般的になってきており、それらは簡単に相対計測できる十分なパワーを出す。また、研究者たちは、ミラーを取り付け、垂直にも水平にも動作できる精密スケールが使えるようになっている。唯一の限界寸法は、ミラーがレーザビームを反射できる大きさが必要であるということである。
 NISTの計測技術は、レーザの力を測る、つまりフォトンの流れによってミラーに働く圧力を測る。ミリグラム(質量)あるいはマイクロニュートン(力)のいずれかで計測された結果は、光パワーの計算に用いられる。スケールは、最初に水平に配置して、上に置いた物質で較正される。この「自己較正」機能は、フィールドで使用する場合、NISTなどに運んで定期的に検査する必要がないことを意味している。レーザの力の計測に利用するとき、スケールは、一般に水平マウントされる大型レーザに適合するように垂直に設置する。
 光パワーの出力は、レーザを使用しながら計測できる、したがって無駄になる光はない。ビームは単純にミラーで反射され、ターゲットに向けられる。
 新しい計測法は、レーザパワーの計測を簡素化するだけでなく、基礎的な計測科学の進歩にも貢献する。今度は、NISTは光ワット(基本的な電気単位)とキログラム、基本的な質量単位とを比較できるようになる。これは、レーザパワーの計測精度向上につながり、工場フロアではマイクログラムレベルで質量較正が素早くできるようになる。
 NISTの研究者たちは、赤外レーザと商用スケールでプロトタイプセットアップの開発とテストを行った。テーブルトップスケールの重さは25ポンド足らず。NISTの研究者たちは、そのセットアップは究極的には従来のアプローチの1/5程度のコストになり、1/10程度の時間(2秒以下)になると見ている。その方法は、±1%の比較精度になると予測されている。