April, 21, 2016, 東京/大阪--大阪大学大学院基礎工学研究科 井元信之教授、東京大学大学院工学系研究科 小芦雅斗教授およびNICT 未来ICT研究所 三木茂人主任研究員のグループは、広帯域光周波数多重化を利用した大規模量子情報処理の基礎技術である周波数領域のスプリッタを実現し、これを異なる光周波数(異波長)の二光子に適用したHong-Ou-Mandel干渉(HOM)を世界で初めて観測した。
これは、従来の空間光回路の集積化に加え光周波数多重化も実現する新しい道筋となる。HOM干渉は、従来のコンピュータをはるかにしのぐ性能が得られるとされる量子コンピュータの基本要素で、幅広く利用されている。
これにより、空間を光周波数に置き換えた新しい光周波数多重化量子演算の道が拓かれ、計算量や通信容量などの情報処理能力の飛躍的拡大が期待される。
Hong-Ou-Mandel(HOM)干渉は1987年にHong, Ou, Mandelの3氏によって提案され、観測された干渉効果。光ではビームスプリッタが使われるが、2つの入力(経路1および経路2)に対して2つの出力(経路3および経路4)がある。ここで経路1および経路2に1つずつ、計2つの「同一周波数の」光子を同時に入力すると、2つの光子は経路3または4のどちらか一方に2つ揃って出力され、経路3と4に1つずつ出力されることはない。これが従来のHOM干渉。この干渉は光量子コンピュータの基本要素であり、ベル測定や量子テレポーテーションなど幅広く利用されていた。
研究グループは、「ビーム」ならぬ「周波数」のスプリッタを非線形光学効果である和・差周波発生を用いて実現し、経路は同一だが周波数が異なる光子を1つずつ同時に入射したとき出力がどちらかの周波数に同一化された2つの光子となる「周波数領域でのHOM干渉計」を作り、その観測に成功した。実験ではPPLN導波路による和・差周波発生および高性能な超伝導光子検出器を用いて、明確に量子力学的な領域の干渉性を示すことができた。
現在までに考えられている光量子演算は空間光回路を利用するものであるが、今回の研究成果により、空間を光周波数に置き換えた新しい光周波数多重化量子演算の道が拓かれ、計算量や通信容量などの情報処理能力の飛躍的拡大が期待できる。
(詳細は、www.nict.go.jp)