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中空ファイバにハイパワーレーザを入力する光トラップ

March, 11, 2016, Erlangen--シンプルな自己整合法によって、微細テーパー状ガラスファイバを中空コア光ファイバ内に取り込むことができる。潜在的アプリケーションは、レーザ切断、基礎物理学研究。
 マックスプランク光科学研究所の研究グループは、レーザ光を使って、微細な尖った先端にテーパー状ガラス光ファイバを、中空コアの光ファイバ内で操作できることを初めて実証した。光学力により、尖った先端、「ナノスパイク」が中空コアの中心で自己整合し、レーザパワーの増加とともに尖った先端をコアの中心にますます強く捉える。
 「非常に強いレーザ光を光ファイバ、特に中空コアのファイバに入れることは非常に難しく、通常は、アライメントを維持するために大規模なエレクトロニクスやオプティクスが必要になる」とマックスプランク光科学研究所ディレクタ、研究チームリーダー、Philip Russellは説明している。「これは、われわれの新しいシステムで達成できる。ナノスパイクを中空コアに押し込み、次にレーザパワーを上げるだけでよい。ナノスパイクが自己安定化すると、レーザパワーを上げることができ、何も動いたり損傷を受けたりすることはない」。
 Optica誌で研究チームは、約90%のレーザ光がナノスパイクから中空コアファイバに伝達されたと報告している。その新しい研究成果は中空コアファイバのアプリケーションを増やすことになる。中空コアファイバは特に、高出力レーザの取り扱いで優れており、このようなレーザは潜在的に、金属、プラスチック、木材などの材料などのレーザ加工や切断で有用である。
 ナノスパイクを作るために研究チームは、直径約100µmの普通のSMFから始めた。伸ばしてテーパー部分を作るために、このファイバを加熱し、次にそのファイバの先端を塩酸でエッチングして直径約100nm、長さ1㎜以下のナノスパイクを作製した。
 研究チームは、ナノスパイクを中空コアファイバに挿入して光トラップを作製し、ハイパワー1064nmレーザビームをそのSMFに入れた。レーザ光がファイバのテーパー部分に入ると、レーザ光はナノスパイクを超えて中空コアファイバの空間に広がり始める。テーパーが細くなればなるほど、光はより大きなファイバコアの境界を感じ始める。これによって光は内側に反射しテーパーファイバに向かって進む。この反射光がナノスパイクに機械的な力を加え、光トラップが形成される。
 「ナノスパイクは、適切な位置で光によって保持され、光は中空コア内に完全に取り込まれる。光をその場所にとどめるためのエレクトロニクスや他のシステムは不要である。どれかコンポーネントが多少動いても、レーザ光には何の影響もない。ナノスパイクが自己整合し自己安定化するからである」とRussellは説明している。
 ハイパワーレーザ光を中空コアファイバに効率的に結合することだけでなく、その新しいシステムは光、つまりオプトメカニクス、特に非常に低圧の光による機械的な力を研究するための全く新しい方法を提供する。
 「ナノスパイクのすばらしさは、それが微小粒子のように振る舞うことである。それがファイバ先端に強く結合し、トラップから飛び出しても失われないからである。このシステムにより、他のシステムではほとんど計測不可能な力を計測でき、あまりよく分かっていない基礎物理学分野の研究が可能になった」とRussellはコメントしている。