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ステンレス鋼のすきま腐食を蛍光イメージング法により可視化

February, 29, 2016, 仙台--東北大学の研究チームは、水溶液中における金属表面の水素イオン濃度指数(pH)と塩化物イオン濃度の分布を同時計測できる蛍光イメージングプレートを開発し、ステンレス鋼のすき間腐食発生過程における水素イオンと塩化物イオンの局部的な濃縮とその時間変化を観察することに成功した。
 開発した蛍光イメージングプレートは、励起光として紫外光を用い、波長を切りかえることで、pHあるいは塩化物イオン濃度に対応した発光状態となる。励起光の波長を270 nmとし吸収フィルタにより475 nmから570 nmの発光を計測した場合、pHが低下するほど緑色(ピーク波長:544 nm)の発光強度が低下して画像は暗くなる。この際、緑色の蛍光強度は、塩化物イオン濃度に依存して大きく変化することはない。また、励起光の波長を330 nmとし吸収フィルタにより380nmから530nmの発光を計測した場合には、pHに依存することなく、塩化物イオン濃度が高くなるほど水色(ピーク波長:447 nm)の発光強度は低下して画像は暗い紺色になる。したがって、励起光の波長を高速で切りかえることで、ほぼ同時に、pHと塩化物イオン濃度に対応した蛍光画像を連続撮影することができる。
 また、今回開発した蛍光イメージングプレートは、可視光(波長350 nm以上)による照明では発光しない。感応膜を作製するための試薬類や石英板も無色透明であるため、紫外線を照射しない状態では蛍光イメージングプレートは無色透明。したがって、蛍光イメージングプレートに覆われた状態であっても、金属表面の溶解・侵食状態などを鮮明な画像として観察することが可能。
 今回の研究では、蛍光イメージングプレートを用いて、塩化ナトリウム水溶液中におけるFe-18Cr-10Ni-5.5Mnステンレス鋼のすき間腐食発生過程を解析した。その結果、すき間腐食の発生に先だち、すき間内では低pH化とわずかな塩化物イオンの濃縮がゆっくりと同時に進行する期間があることが分かった。その後、局部的な溶解発生と共に急激な強酸性化と塩化物イオンの高濃度化が起こり、すき間内溶液は4mol/Lを超える濃塩酸に相当する溶液組成に変化することが分かった。今まで、pHと塩化物イオン濃度は急激に変化することはなく、塩化ナトリウム水溶液から濃塩酸への組成変化はゆっくりと進行するものと考えられていたが、今回の研究により、すき間腐食の発生には、臨界pHと臨界塩化物イオン濃度が存在する可能性が示された。低pH化と塩化物イオンの濃縮がゆっくりと進行し、すき間内溶液組成が臨界値に到達した時、すき間腐食の発生と濃塩酸化が、突然しかも同時に生じることが観察された。
 研究により、ステンレス鋼のすき間腐食の発生とすき間内溶液の濃塩酸化には、臨界pHと臨界塩化物イオン濃度が存在する可能性が高いことが分かった。ステンレス鋼には、耐食性を向上させるためにCrやNiなどが添加されている。
 研究チームは、各合金元素の役割を、臨界pHと臨界塩化物イオン濃度の観点から解析することで、代替元素の探索を進め、希少元素を多量に添加する必要のない省資源型高耐食ステンレス鋼の開発を目指していく予定。
 研究チームは、武藤泉東北大学大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻 教授)、小川純一郎(元同大学院工学研究科 大学院生)、西本昌史(同大学院工学研究科 大学院生)、菅原優(同大学院工学研究科助教)、原 信義(同大学院工学研究科教授、東北大学理事)で構成されている。