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MIT、セルフアセンブルナノロッド

February, 18, 2016, Cambridge--1960代から、コンピュータチップはフォトリソグラフィプロセスを用いて作られてきた。しかし過去5年で、チップの回路デザインは光波長よりも小さくなった。つまりフォトリソグラフィプロセスになんらかの独創的な改良が必要となっている。ムーアの法則で予言されているように回路微細化レートを維持するには、最終的には新しい製造技術が必要になる。
 ブロック共重合体、自然に自己形成して有用な形状になるモジュールは、フォトリソグラフィの1つの有望な代替となる。Nature Communicaionsに発表された論文では、MITの研究チームはブロック共重合体ワイヤ層をスタックする初めての技術について報告している。これは、1つのレイヤでワイヤが自然に下のレイヤのワイヤに垂直に適応していく。
 そのような「メッシュ構造」が簡単に作製できることは、自己形成が、メモリ、光チップ、将来世代のコンピュータプロセッサの極めて実用的な製法になり得ることを示している。
 MITのエレクトロニクス研究所ポスドク、Amir Tavakkoliによると、ここではEBリソグラフィを使わず、最初のブロック共重合体レイヤをテンプレートとしてその上に自己形成でさらにブロック共重合体レイヤを自己形成する。
 ポリマ(共重合体)は、一続きの鎖になっている基本分子ユニットからできた長い分子。プラスチックはポリマであり、DNAやタンパク質のような生物分子も同様である。共重合体は2つの異なるポリマをつなげてできたポリマである。
 ブロック共重合体では、化学的に互換性がないようにポリマ成分が選択されている。これにより相互に排斥しあうことになる。つまり単一のポリマチェーンでも、ポリマフィル内でも排斥しあうので、自己組織化が起こる。
 MITの場合、ポリマ成分の1つはカーボンベースで、もう1つはシリコンベースである。カーボンベースのポリマから逃れようとして、シリコンベースのポリマは畳み込まれ、内部にシリコンベースのポリマのループを持つ円筒(シリンダ)を形成する。他方のポリマは外側に林立している。シリンダが酸素プラズマに晒されると、カーボンベースのポリマは燃えてなくなり、シリコンが酸化し、基板にガラスのようなシリンダが付着して残る。
 第2のシリンダレイヤをアセンブリするためには、研究チームはそのプロセスを繰り返すだけでよい。ただし、わずかに異なる鎖の長さを持つ共重合体を用いる。新しいレイヤのシリンダは自然に最初のものに垂直に適合していく。
 最初のシリンダグループが形成された表面を化学処理すると、シリンダを平行に並べることができる。その場合、シリンダの第2レイヤも、最初のレイヤに対して垂直に、平行列を形成する。
 最下層のシリンダが無作為に形成されて、精巧な湾曲パタンになると、第2レイヤのシリンダはその相対的な向きを維持し、それ自体が精巧であるが垂直なパタンを形成する。

 ガラスのようなワイヤは、電子的な応用には直接役に立たないが、他のタイプの分子で実を結ぶ可能性がある。つまり、電子的に活性化したり、他の材料を堆積するためにテンプレートとしてそれらを使用する、などである。研究チームは、より高機能なポリマで、今回の成果を再現できるようになることを考えている。それには、そうした成果を生んだプロセスを理論的に評価しなければならなかった。材料科学・工学院生Karim Gadelrabは、「ポリマの方向性を制御する重要パラメータを理解するためにコンピュータシミュレーションを使う」とコメントしている。
 わかったことは、最下層のシリンダの形状が、上層のシリンダの可能な配向を制約していると言うことだった。下層のシリンダの壁が急峻過ぎると、上層シリンダにうまくなじまないで、上のシリンダは別の方向を探そうとする。
 また、上下のレイヤの化学的相互作用が弱いことも重要。そうでなければ、上のシリンダは、積み上げた丸太のように、下のシリンダの上に積み重なろうとする。
 これらの特性、シリンダの形状と化学的相互作用の両方とも、ポリマ分子の物理学から予言することができる。したがって、同じ振舞いをする他のポリマを特定することは可能である。
 Intelのエンジニア、Patrick Theofanisによると、ナノシリンダそのものよりも、それらの空間の方が興味深い。「一般に、角穴を形成できることは、われわれにとって非常に有益である」と同氏はコメントしている。
 「チップの後端を考えると、そこには配線があり、その後端金属レイヤ間にはインタコネクトレイヤがある。さらに、それは穴を開けて1つのレイヤを次のレイヤにつなぎたいところである。アスペクトレシオが極めて可変的であるので、それは魅力的な技術である」と同氏は話している。