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NASA、レーザ通信用集積フォトニクスモデムを作製

February, 9, 2016, Greenbelt--集積フォトニクスモデムが、NASAの多年レーザ通信リレイデモ(LCRD)の一環として2020年に国際宇宙ステーション上でテストされる。携帯電話サイズのデバイスはマイクロチップ上に、レーザ、スイッチ、配線などのオプティクスベースの機能を含んでおり、エレクトロニクスハードウエアのICのようなものになっている。
 宇宙ステーションに搭載されると、いわゆる集積LCRD LEO(Low-Earth Orbit) User Modem and Amplifier(ILLUMA)は、NASAのLCRDの低地球軌道端局として機能し、高速のレーザベース通信向けに、もう1つの機能を実証する。
 1958年開始以来、NASAはもっぱらRFベースの通信に依存してきた。現在、ミッションは以前にも増して高速データレートを必要としており、LCRDの必要性が一段と緊要になってきている。
 LCDは、NASAがデータ、映像および他の情報を送受する方法を変える見込みがある。レーザを使って今日の通信装置よりも10~100倍高速にデータをエンコードして伝送し、必要な質量もパワーも大幅に少なくなる。そのような技術的飛躍によって、宇宙船から太陽系の惑星を跨いでビデオや高精細計測データを送ることができるので、研究者たちは他の世界の状況を詳細に研究することができる、ここ地球上でハリケーンやその他の気象、環境変化を追跡するのと同じように研究できる。
 2019年に運用開始になる予定のプロジェクトは、レーザ通信へのNASAの最初の進出ではない。Lunar Atmosphere and Dust Environment Explorer (LADEE)搭載ペイロードは、2013年に月軌道から、また月軌道への記録的なダウンロード、アップロード速度を実証した、それぞれ622Mbps、20Mbpsだった。
 しかし、LCRDは当初の2年実証期間後、運用システムとなるように設計されている。ホストされたペイロードと特別装備の地上局が必要になる。ミッションは最初の2年で、地球静止軌道から地上局まで完全運用システム実証に使用される。NASAがそうした機能を実証すると、ILLUMAを使って静止軌道と低地球軌道宇宙船との間の通信をテストする。

非常に優れた端局
 ILLUMAは新しい技術、集積フォトニクスを実現している。これは光を使うあらゆる技術を変革すると考えられている。これに含まれるのは、光ファイバによるインターネット通信から、化学ディテクタ、監視システムなど。
 「集積フォトニクスは、ICのようなものであるが、電子ではなく光を使って多様な光機能を実現する」とCornwell氏は説明している。ナノ構造、メタマテリアル、シリコン技術における最近の開発は、このような高集積光チップのアプリケーション範囲を広げた。さらに、今日のエレクトロニクス回路と同じように、リソグラフィで量産できるので、フォトニクスデバイスのコストは一段と下がる。
 「この技術により、NASAのあらゆるタイプのミッションが可能になる、単にLCRDの光通信だけではない」とCornwell氏は付け加えている。
 「われわれは、長期にわたりこれを推し進めてきた。その技術は光システム設計を簡素化する。光デバイスのサイズや消費電力を小さくし信頼性を高め、それでいて、より低コストのシステムから新しい機能を可能にする。集積フォトニクス回路を利用するというわれわれの戦略は、地球と惑星-宇宙における通信だけでなく、科学計測器にも革命を起こす」と同氏は話している。
 
フォトニクス実証の第1段階
 NASAプロジェクトで、Mike Krainakのチームは端局のサイズを縮小し、現在2つのトースターサイズ程度になっている。これは、すべての光関連の機能がマイクロチップに押し込められることによって容易になる課題である。そのモデムは1部光ファイバを使用するが、ILLUMAは集積フォトニクス回路の構築と実証の第1段階である。光回路は、最終的にはこれらの機能を1つのチップに実装する。
 ILLUMAは、飛行しながらその技術の品質評価を行い、将来の宇宙船に向けた重要機能も実証することになっている。地上局との通信に加えて、将来の人工衛星は相互通信能力も必要とするからである。
 「われわれがやりたいことは、科学コミュニティと、より高速にデータ交換をすることである。モデムは安価でなければならない。小さくなければならない。軽量でなければならない」とKrainak氏は言う。目標は、そのような技術を開発し実証し、産業や他の政府機関が利用できるよにし、コストを一段と下げるために規模の経済を実現することである。
 集積フォトニクスは宇宙科学と惑星間通信に革命を起こすことが見込めるが、地上での利用への影響も同様に大きい、とKrainakは言う。そのような利用の1つはデータセンタである。こうした高価で非常に大きなファシリティには、データを蓄積、管理、分配するために光ファイバケーブルで接続されたサーバがある。
 集積フォトニクス、こうした巨大ファシリティの必要性、サイズを劇的に縮小すると考えられる。特に、こうしたファシリティで動作する必要がある光ハードウエアは、現在の電子回路と全く同じようにチップにプリントされることになる。コストを下げることに加えて、そうした技術はコンピューティングパワーを一層高速化する。
 Krainak氏は、「Google、Facebookは皆、この技術に注目し始めた。集積フォトニクスの進歩はファイバオプティクスよりも一段とコスト効果が優れているので、いずれ利用されるようになる。全てはこの方向に進んでいく」と話している。