コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

シリコンベースメタマテリアルで光回路

February, 8, 2016, West Lafayette--パデュー大学の研究チームによると、開発中の新しい透明メタマテリアルは、電子の代わりに光を使用するコンピュータチップや相互接続回路になる可能性がある。これによってデータを処理、伝送するので、性能は飛躍的に向上する見込みだ。
 光ファイバは大容量データを長距離伝送するために現在使用されているが、その技術は簡単に微小化できない。光波長が大きすぎて微細回路に入らないからである。
 パデュー大学の電気・コンピュータ工学准教授、Zubin Jacob氏は「光ファイバの役割は、光をA点からB点に導波する、実際的に大陸横断することである。銅線ケーブルに対する光ファイバの最大の利点は、非常に高帯域であること。したがって銅線に比べると大量のデータを伝送できる。しかし、コンピュータや家電では、チップのパーツ間は今なお銅線を用いている。理由は、銅線と同じナノスケールに光を閉じ込めることができないからである」と説明している。
 透明のビルディングブロックを持つナノ構造の人工媒体、透明メタマテリアルにより前例のない光制御が可能になり、問題解決の可能性がでてきている。研究チームは、光波長を縮めるメタマテリアルの開発で前進しており、電子の代わりに光を使ってコンピュータチップ内のデータ処理と伝送を行う戦略を目指している。
 「チップ間の相互接続回路だけでなく、チップにおいても超広帯域が実現すれば、クロックスピードが速くなり、したがってデータ処理も高速化する」とJacob氏は話している。こうした進歩により、ハイパフォーマンスコンピュータクラスタのサイズが標準的なデスクトップ程度に縮小できるようになる。
 開発中のメタマテリアルの一部は、金や銀などの貴金属の利用に依存するが、これとは違い、新しいメタマテリアルは完全に誘電体材料でできている、あるいはインシュレータや非金属でできている。こうしたアプローチにより研究チームは、メタマテリアルに基づいた技術開発でこれまで直面していた主要な限界を克服することができる。つまり、金属を使用すると多くのアプリケーションでは光損失が大きすぎて実用にはならない。
 「主要なポイントは、このメタマテリアルで金属を全く使わないことだ。金属を使うと、光の多くが熱に変換され、損失となるからだ。われわれはすべてをシリコンプラットフォームで行いたい、同じチップ上に電子デバイスや光デバイスを集積するための最良の材料がシリコンであるからだ」(Jacob)。
 重要な点は材料の「異方性速度」である。つまり、光は材料内を、他方向に対して一方向に高速伝搬する。従来の材料では、方向に関係なくほぼ同じスピードで光は伝搬する。
 「この研究で難しいところは、高異方性材料を必要とすることである。したがって、光は一方向にはほぼ真空中であるかのように伝搬するが反対方向にはシリコン内と同じように、つま約4倍遅く伝搬する」。
 イノベーションによって「全反射」という現象を改良することが可能になった。全反射は、現在、光ファイバの導波に使用されている原理だ。研究チームは、新しいシリコンベースのメタマテリアルによってファイバ内の全反射を操作しようとしている。
 「われわれは、基本的にこの全反射現象をナノスケールに適用できるようにした。これは、通常、不可能と考えられていた」。
 材料は透明であるので、光伝搬に適している。この点は、実用的なデバイス応用には重要な問題である。このようなアプローチによって回路内の過熱が減り、デバイス動作に必要なパワーが少なくてすむ。そうしたイノベーションよよって、究極的には微細なデータ処理ユニットが実現する。
 「このような透明メタマテリアルでもう一つの魅力的なアプリケーションは、単一量子光エミッタで光と物質の結合が強化されることである。ファイバ内の光波のサイズは大きすぎて、微小な原子や分子と効果的に相互採用できない。透明メタマテリアルクラッドは、光波をサブ波長に圧縮するので、光は量子物体と効果的に相互作用できる。これは、シングルフォトンレベルでの光源に道を開く」Jacob氏はコメントしている。