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Science/Research 詳細

テラヘルツ波でコンクリート鋼橋外ケーブルの被覆PC鋼線を可視化

December, 17, 2015, 仙台--東北大学大学院工学研究科の小山裕教授の研究グループは、光と電波の特徴を併せ持つ新しい光「テラヘルツ波」の光源を独自に開発し、それを用いて、エクストラドーズド橋等の樹脂被覆された外ケーブル内部の見えないPC(prestressed concrete)鋼線を可視化することに成功した。
 従来の非破壊検査に用いられる放射線と異なり、浴びても人体に悪影響が無いテラヘルツ波を用いて、これまで検査方法が無いと言われていた外ケーブルの内部PC鋼線を、非破壊で検査出来る画期的な新たな手法への道を拓いた。
 研究の成果の一部は2015年8月に韓国釜山で開催された2015 CLEO (Conference on Lasers and Electro-Optics) Pacific Rim Conference等で発表された。

 近年、社会基盤インフラの重要な構造物であるコンクリート鋼橋の建設で、建築コストと安全性、景観等の観点から、エクストラドーズド橋(extradosed bridges)の建設が相次いでいる。世界初のエクストラドーズド橋として知られ、1994年に竣工した小田原ブルーウェイブリッジ(神奈川県)は、橋長:270.0m最大支間:122.0m。また海外ででも、フィリピンの第2マクタン橋(橋長:410.0m最大支間:185.0m完成年:1999年)等、多くのエクストラドーズド橋が建設されている。
 エクストラドーズド橋構造では、荷重分散のための外ケーブルが重要な構成要素の一つであるが、これはポリエチレン樹脂等で被覆されているため、腐食などに対して極めて安全性が高く、点検を要しないものと考えられてきており、現在、有効な健全度の点検手法が無いと言われている。しかし、長寿命化の観点からエクストラドーズド橋の主要部材である外ケーブルのPC鋼線の健全度診断技術の必要性が叫ばれている。その際、ケーブルの外層被覆を除去して目視点検する破壊的な検査では、点検後に元の状態に修復することは困難であり、かえって水等の侵入による腐食を招きかねないことから、非破壊による内部PC鋼線点検方法が求められている。
 今回の成果は、研究グループ独自の電子デバイステラヘルツ光源及びレーザテラヘルツ光源と測定光学系を開発し、それを、ポリエチレン等の樹脂に対して高い透過能を持ち、樹脂内部の金属表面からは効率よく反射される「テラヘルツ波」の特徴を活かすことにより、外層樹脂被覆を除去することなく非破壊で内部のPC鋼線をイメージングすることに成功した。