コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

有機薄膜太陽電池で飛躍的なエネルギー変換効率の向上が可能に

December, 4, 2015, 和光/京都--理化学研究所創発物性科学研究センターの尾坂格上級研究員、瀧宮和男グループディレクターと京都大学大学院工学研究科の大北英生准教授らの共同研究チームは、新しく開発した半導体ポリマを用いることで、有機薄膜太陽電池(OPV)の光エネルギー損失を無機太陽電池並みまで低減することに成功した。
 OPVは半導体ポリマーをプラスチック基板に塗って薄膜化することで作製できるため、コストや環境負荷を抑えることができる。また、大面積化が容易であるうえに、軽量で柔軟という現在普及している無機太陽電池にはない特長を持つ次世代太陽電池として注目されている。OPVの実用化にはエネルギー変換効率(太陽光エネルギーを電力に変換する効率)の向上が最重要課題。しかし、一般的にOPVは光エネルギー損失が0.7~1.0eVと無機太陽電池(0.5eV以下)に比べて大きいため、吸収できる太陽光エネルギー(バンドギャップ)に対して出力できる電圧が無機太陽電池に比べて小さく、高効率化の妨げになっていた。
 研究チームは、新しく開発した半導体ポリマ「PNOz4T」を用いることで、OPVの光エネルギー損失を無機太陽電池並みの約0.5eVまで低減した。加えて、エネルギー変換効率も最大で9%とOPVとしては非常に高い値を示した。これほど光エネルギー損失が小さいうえに、高いエネルギー変換効率を示すOPVはこれまでに報告がない。また、PNOz4Tの薄膜を分光法により詳細に解析したところ、薄膜を改善することで、エネルギー変換効率がさらに向上する余地があることが分かった。
 研究で開発したPNOz4Tの性質を最大限に引き出すことができれば、OPVのエネルギー変換効率は実用化レベルの15%程度まで向上する可能性がある。研究チームは、さらに改良を加えることで、2016年度末での12%達成を目指している。
(詳細は、Nature Communications)