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細胞の3D培養を実現する3Dナノファイバ「HYDROX」を社外提供

December, 1, 2021, 京都--島津製作所は、細胞の三次元(3D)培養を実現する3Dナノファイバ「HYDROX(ハイドロックス)」を2022年1月から研究機関、大学、企業に提供していく。
 同社は、細胞研究・細胞関連産業に携わる研究機関、企業を支援するため、細胞培養ソリューションの研究開発においてオープンイノベーションを推進してきた。「HYDROX」のサンプル提供は、その一環になる。

細胞研究や創薬スクリーニング、再生医療などでは生体の機能に近い細胞の塊(以下、細胞塊)を生体外で構築することが求められる。三次元ナノファイバ「HYDROX」は、細胞塊の形成を補助する島津独自開発の新素材。今年8月には、大阪大学大学院薬学研究科分子生物学分野の水口裕之教授、鳥羽由希子特任助教(常勤)らの研究グループと共同で、「HYDROX」をiPS細胞から肝細胞への分化誘導に適用することで、高効率に肝細胞へ分化することを明らかにした。島津は「HYDROX」について、同12月1日〜3日開催の分子生物学会で発表、12月8日~10日開催の再生医療EXPO(幕張メッセ)で展示を予定している。

従来、細胞培養は、二次元的な「平面培養」が一般的だった。しかし、ヒトの細胞は大半が三次元的に構成されるため、平面培養した細胞は生体細胞の機能に及ばないと指摘されている。近年、立体的な培養である「三次元培養」が注目されている。三次元培養では、主に動物由来成分が細胞同士および細胞と細胞外マトリックスの相互作用を促進する足場材として用いられている。しかし、動物由来成分を使用すると再現性や安全性、取り扱い、製造の難しさが課題になっていた。

島津製作所では2016年に独自の化学合成ポリマー (HYDROX原料ポリマー)から、三次元ナノファイバ「HYDROX」を開発し、その後、「HYDROX」を利用すれば、簡便な三次元培養が可能であることを突き止めた。実際の培養は、溶解したHYDROX原料ポリマー粉末を培養プレートに滴下し、乾燥させて乾燥ゲルをプレート底面に形成する。その後、作成したゲルに細胞懸濁液を添加。乾燥ゲルが水分を吸収し三次元ナノファイバ「HYDROX」を形成する。その過程でナノファイバにトラップされ培養された細胞が凝集し、三次元の細胞塊が形成される。さらに過剰量の水分を添加することでHYDROXナノファイバの構造が壊れるため、細胞塊のみを容易に回収できる。

一連の培養操作は簡単で安全性も高いことから、HYDROXは動物由来成分の代替材料としての可能性を秘めており、島津製作所は2023年以降の商品化を目指している。
(詳細は、https://www.shimadzu.co.jp)