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進化を続ける産業用高出力ブルーレーザ

May, 25, 2021--高出化・高輝度化・低価格化が進む製品群。

100年に1度と言われる自動車産業の変革期と言われる技術革新は、自動化、コネクテッド、シェアリングそして電動化と言われているが、中でも電動化と多機能化によって自動車には電子部品、機器が多く搭載され、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)の普及により従来の内燃機関エンジンに使われる銅の使用量に比べてその消費量が急増する。これに伴い銅材料の加工技術の開発は大変重要となってくる。

各種加工技術の中でもレーザ加工技術は、非接触かつ局所加工が可能で小型・軽量化される自動車の電動化においても重要な役割を果たすと期待される。
しかしながら従来の赤外レーザ(IRレーザ)では銅材料や高反射材料への加工は材料の特性上困難であった。電動化のキーとなる部品、主にモーター及びジェネレーター(あるいはモータージェネレーター)、バッテリー、パワーコントロールユニットのインバーター及びパワーモジュールなどや、それらの配線などがありどれも銅材料が使用され、それゆえに効率的で安定した銅の加工技術開発は重要であり急務である。

ブルーレーザによるソリューション
この銅材料や高反射材のレーザ加工のソリューションとして、レーザーライン社は今までに無かったキロワット級の新しいCW(連続波)レーザ発振器“ブルーレーザ” を開発した(図1)。
ブルーレーザは青色波長450nmを発振、この波長は銅材料に対してIR光では5%程度の吸収率が60%以上あり、IR光では不可能であった加工中のスパッタ飛散の無い高品質な加工が可能である。同社は産業用高出力半導体レーザ発振器の専門メーカーで、このブルーレーザは青色波長の半導体レーザ(LD)をベースにしており、昨今の青色波長LDの技術革新により装置化が実現した。
LDは半導体素子に通電することにより手軽にレーザ光を発生させ、我々の家庭にも電化製品の一部として普及しているレーザ光源である。構造的には独立したレーザ媒質と外部共振器を持たないため、非常にシンプルな発振器構成、小型、高効率の産業用の光源である。
従来のファイバレーザやディスクレーザの励起用途や既存のダイレクトLDで使用されるLDは、光通信用途などで良く知られるGaAs系のIR光を発振する半導体チップであるが、ブルーレーザはBlu-ray用途や、レーザディスプレイ、最近では自動車のヘッドライトなどで知られている青色系LDチップ(GaN系450nm発振)を実装した発振器である。2019 年に発売されたブルーレーザは、青色波長450nm、600μm コアファイバ端で500W、1mm コアファイバ− 端で1000W 発振であったが、わずか1 年後の2020年には、400umコアファイバ端で1000W、600um コアファイバ端で2000W 発振するモデルが発売された。更にマルチキロワット級発振の高出力化の開発も進んでいるが、その一方でNA 値を0.2 から0.1 にした400μm コアファイバNA0.1 で800W、600um コアファイバNA0.1 の1500Wの モデルも新たにラインアップされ、スキャナー加工等にも有効な発振器が追加された。これらの急速な高出力化によりフォトンコスト( 1W あたりの単価)も下がっている。今までIR帯のレーザ発振器では困難であった材料へのレーザ加工をその450nm という短波長の優位性から非常に高効率な加工プロセスの実現を可能とすると期待されている。

高出力ブルーレーザの深溶込み溶接
高出力ブルーレーザ開発は、大出力化、高輝度化の方向で大きく動いておりその開発動向に大きな注目を集めているが、その一方で、IR レーザ光とのハイブリッド化によるソリューションも研究されている。実際にはブルーレーザはこの十数ヶ月で1000μm コアファイバ端で出力1kWから、600μm コアファイバ端で2kW の出力を達成しており、開発計画に基づき毎年大出力化の開発が進んでいる。しかしながら現在のIR 帯DDL のようなマルチキロワット級の出力帯の到達には段階を踏む必要がある。これに対して市場の要求に応えるべく1mm 以上の厚い銅板や太い銅線の溶接、銅材料上への銅のレーザクラッディングなどへの加工ソリューションがIR と青色波長を組み合わせたDDL のハイブリッド化である。このハイブリッド化の発振器には19 インチラックタイプの筐体を用い、ハイブリッド化しても非常にコンパクトな構成となる(図2)。青色波長によるスパッタの無い溶接品質向上の効果と、大出力でのIR 波長による深い溶込み加工の実現を目的としている。これから様々な加工試験を実施していくが、今のところ一般的なIRレーザの大出力レーザ光によるキーホール溶接と青色波長のスパッタの発生の無い穏やかな溶融池の両者の持つ長所が良く現れた深溶け込み溶接結果が得られている(図3)。
尚、レーザーライン社は高輝度のIR波長のコンバーターレーザ( DDL にコンバーターモジュールを繋いだ新しいファイバレーザ)とのコンビネーションも用意しており、様々な加工にフレキシブルに対応する。今まで見ることのなかったブルーレーザの今後の動向から目が離せない。

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図1 青色LDチップ(左)。ブルーレーザ発振器(中央)。ブルーレーザによるスパッタの無い溶接例(右)。

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図2 青色波長とIR波長のハイブリッド化。

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図3 ブルーハイブリッド加工例。ヘアピン溶接(上段左、中央)。Cu wire hairpin welding by IR+Blue Hybrid solution
(IR:2kW,Blue:1kW,Wire size:2.0×2.0mm/wire,Welding area 2.0×4.0mm2)。断面図(上段右)Cross section by Hybrid IR:4kW, Blue:1kW, Depth:2.36mm。ビードオンプレート(下段)Cu plate over wrapping welding 1mm and 2mm laser welding IR:3kW, Blue:1kW Width 2.21mm。

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