コヒレント特設ページはこちら

Business/Market 詳細

光ファイバの量産製造法「VAD法」がIEEEマイルストーンに認定

May, 22, 2015, 東京--日本電信電話(NTT)、古河電気工業(古河電工)、住友電気工業(住友電工)、及びフジクラの4社が共同で研究開発・普及促進した「高品質光ファイバ量産製法として用いられるVAD法(1977年-1983年)」の功績が、世界規模での急速な光通信ネットワーク構築に貢献したとして、電気・電子・情報・通信の技術分野における世界最大の学会であるIEEEより、世界的に権威のある「IEEEマイルストーン」に認定された。
 ガラス光ファイバは1970年代に長距離通信用の光伝送媒体として期待され、光ファイバの研究が世界中で活発に行われるようになった。このような状況のなか、NTT(当時、日本電信電話公社)、古河電工、住友電工、フジクラ(当時、藤倉電線)は、1975年に光ファイバの共同研究体制を立ち上げ、共同で石英系ガラス光ファイバ技術の研究開発を開始した。その過程において、1977年にVAD法と呼ぶ量産性に優れた光ファイバの製造方法が発明された。
 VAD法の発明と4社の共同研究体制での改良により、1983年には高品質かつ低損失な光ファイバを量産できる段階までVAD法の技術を高め、研究段階から商用化に移行させることに成功した。現在、VAD法は世界で最も多く採用されている光ファイバ量産法であり、世界で生産されている通信用光ファイバの約60%はVAD法を基本技術として製造されている。このように、VAD法は光ファイバ量産法として広く用いられており、今日の情報通信社会の基盤である光通信ネットワーク構築に大きく貢献している。
 通信用光ファイバは、光ファイバの基になる円柱状のガラスの塊である母材を作製し、母材を加熱して細い糸状に線引きすることで作られる。光ファイバ通信の普及には、光ファイバの低損失化に加えて量産性に適した製造方法が必要。光ファイバの量産化には、いかにして大型の母材をしかも高速に製造できるかがキーになっていた。
 VAD法は、反応性の高い火炎加水分解法によりガラス微粒子(SiO2-GeO2)を出発材の先端に下方に堆積しながら堆積した部分の外側をSiO2ガラスの微粒子で覆い、多孔質ファイバ母材を作製する。VAD法は一軸方向(上方)に引き上げながら多孔質ガラスを成長させることができるので大型のファイバ母材を作製することができる。続いて作製した多孔質ガラスをヒータにより加熱することで透明ガラス化したファイバ母材が得られる。ファイバ母材を線引きすることで光ファイバが作られる。
 ファイバ母材の製造法には、VAD法の他に代表的なものとして、MCVD法とOVD法がある。MCVD法は、母材への不純物の混入が少なく、低損失な光ファイバの実現に適した方法。しかし、ガラス管の内側にガラス微粒子を堆積するため母材の太さと長さに制限があり、長距離用光ファイバのための大型ファイバ母材の作製には適していない。また、MCVD法のガラス微粒子は熱酸化反応によって生成されるため、火炎加水分解法よりも反応速度が遅いという欠点がある。OVD法は心棒の周りに火炎加水分解法によりガラス微粒子を堆積し多孔質ファイバ母材を作製する。太さ方向にはファイバ母材の大型化は可能だが、長さ方向は心棒の長さに制限される。また、OVD法は多孔質ファイバ母材を高温処理により透明ガラス化する前に心棒を引き抜く必要がある。この工程において多孔質ファイバ母材と心棒が接している面に傷などが入りやすく、工程的な難しさがある。
 以上のように、VAD法はファイバ母材の大型化、量産化に適した製造法であり、VAD法の発明により、光ファイバの量産化への道が開けた。

 「IEEEマイルストーン」とは、IEEEにより、電気・電子・情報・通信分野における画期的な技術革新の中で、開発から25年以上にわたり国際的に高い評価を受けてきた技術革新の歴史的業績を称える表彰制度として1983年に設立された。
 過去の受賞例では、19世紀における電話やエジソン研究所、マルコーニの無線通信※4など、近代化の基盤となった歴史的施設・技術や、20世紀では、テレビ、コンピュータ、インターネットなど情報通信を支える技術が認定されている。