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純国産の金属3Dプリンタ技術体系の確立

December, 27, 2021, 京都--島津製作所の子会社、島津産機システムズ株式会社およびエス.ラボ株式会社、第一セラモ株式会社、近畿大学は、「MEX方式(材料押出積層法、Material EXtrusion)の金属3Dプリンタによる金属・セラミックス部品の開発技術の革新」を目的にした共同研究に取り組む。
 金属3Dプリンタ業界では、海外製の装置・原材料が多く流通しているため「導入・利用コストが高い」「アフターサービスが十分ではない」「日本メーカーの需要に即した製品が少ない」といった課題がある。
 共同研究では、国内メーカーと大学がそれぞれの専門性を持ち寄ることで、様々な優位性を持つ「MEX方式の純国産化」を目的としている。

製造業では2000年以降に3Dプリンタの活用が広がってきた。当初の材料は扱いやすい樹脂だけだったが、近年は金属材料の加工も可能になっている。現在、金属3Dプリンタを製造するメーカーの多くは、敷き詰めた金属粉末をレーザで溶かしながら造形する「PBF方式」(粉末床融解結合方式=Powder Bed Fusion)を採用している。一方、樹脂で主流の「MEX方式」を金属3Dプリンタでも採用する動きが出ている。その場合、金属粉末を混ぜた樹脂材料を熱で溶かしながら造形した後に樹脂を除き金属焼結体(造形物)を得る。この方式は設備がシンプルで、造形が速く、大きな造形物にも対応できるため、試作品だけでなく実部品の製造にも適している。さらに共同研究では、有機溶剤を用いない方法の実現を目指しており、「環境に配慮した金属3Dプリンタ」の普及につなげたいと考えている。

4者が実現を目指す金属3Dプリンタの加工工程では、第一セラモの3Dプリンタ用コンパウンド材料(ペレット状)を、エス.ラボの金属3Dプリンタ「GEM200DG」で造形して、島津産機システムズの小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」で焼結する。共同研究では各者の拠点に装置・部材を置いて効率的に研究を進め、材料ごとの最適な処理条件の探求や金属3Dプリンタシステムの改良に取り組み、専門知識がなくても容易に金属3D造形品を生産できるノウハウを確立していく。なお、金属3Dプリンタ技術の権威である近畿大学次世代基盤技術研究所の京極秀樹特任教授が研究全体の評価・指導に当たる。

島津製作所は、AIやロボティクス技術を含むインフォマティクス(情報科学)の研究開発に力を入れている。マテリアルズ・インフォマティクス(情報科学を用いた効率的な新材料の探索・研究開発、=MI)やプロセス・インフォマティクス(MIによる探索で得た新材料の製造法の探索・最適化、=PI)を金属3Dプリンタ関連の研究開発に用いて、製造業や研究機関による画期的な新材料の開発業務を支援していく。

(詳細は、https://www.shimadzu.co.jp)