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3Dプリント部品を使った中国最初の商用航空機

June, 26, 2017, Beijing--IDCの「IDCワールドワイド半年ごとの3Dプリンタートラッカー」によると、中国初の商用航空機C919が、2017年5月5日上海浦東国際空港から初飛行した。これは中国航空産業における歴史的な瞬間である。C919は、中国商用飛機有限責任公司(COMAC)が開発した。同社は、航空機開発で3Dプリンティングとチタン合金など特別な金属を使用した。
 COMACは、C919を上海で設計、組み立てた。航空機の部品は中国の様々なサプライヤーが製造した。フロントパーツと翼は、成都と西安で製造。本体は南昌で製造された。
 「Made in China 2025」マスタープランは、中国が従来の製造業経済を根本的に変える道筋をつけるものである。C919の初飛行成功は、西側のハイエンド製造分野と競争する中国の意欲と決意を実証した。「Made in China 2025」マスタープランは、10分野に注力している。その一つが航空移駐装置の開発、3Dプリンティングである。政府は、3Dプリンティングが中国製造業全般の成長を力強く実現すると捉えている。
 3Dプリントされたチタンパーツが、航空機の軽量化と安全性強化のためにC919に導入された。28のキャビンドアパーツと2つのファン入力構造化部品がC919にインストールされている。C919の現行部品は中国製は、約60%であった。当初の目標はわずか10%である。とは言え、重要部品はまだCFM International, Liebher-Aerospace, FACCおよび Honeywellなどの海外製である。
 次の目標は、2025年までに、中国製部品を90%に増やし、中国製ジェットエンジンを搭載すること。中国航空産業のアグレッシブな開発は、3Dプリンターと金属粉体の需要増につながる。
 IDCイメージングプリンター、ドキュメントソリューション調査リサーチマネージャー、Wendy Mok氏は、「航空宇宙産業では3Dプリンティング技術採用のユースケースがもっと増える」と見ている。同氏によると、GEは金属3Dプリンターメーカー2社、コンセプトレーザ(Concept Laser)とArcamを買収した。両社は3Dプリンターを航空機部品メーカーに供給してきた。ジェットエンジンメーカー、ロールスロイスはArcamのユーザの1つである。Norsk Titaniumは、Boeing Dreamliner向けに最初の連邦航空局(Federal Aviation Administration :FAA)認定3Dプリント構造化チタンコンポーネントを製造する。
 「中国では、C919の初飛行成功は、航空機の3Dプリント部品の利用が中国の航空産業で認定されたことを示唆している。3Dプリントパーツの国内需要は増加する。将来COMACが供給するC919の570個の受注は、現地化率の上昇を伴うと見られている」。
 C919部品のサプライヤーは、製造工程で3Dプリンティングを採用する価値を証明した。FalconTechは海外ブランドの金属3Dプリンターを使用した。同社は総数30の3DプリントパーツをC919に供給した。関連業界でその信頼性と数多くの成功利用例により、輸入3Dプリンターが、中国のハイエンド製造分野で、国産製品に対して著しく競争優位性を持っていた。しかし、多様な3Dプリンターを擁するメーカーにとっては経済負担とリソース分配問題となり得る。
 「3Dプリンティングサービスのアウトソーシングは、初期コストの節約になり、メーカーは製品開発に注力することができる。そのような提携は、製品品質全般の向上に役立つ。この事業モデルも3Dプリンターベンダにとっては普及を後押しすることになる」とMok氏は話している。
 「航空機産業の成長から利益をうけるのは現地航空機メーカーだけではな、海外の企業も中国の航空機市場を注視している。ボーイングは、中国に工場を建設する計画であり、エアバスは天津でA320の組み立てを始めた。さらに、外国企業が供給するパーツは、中国でも製造可能である。航空機に対する膨大な国内需要は、さらに多くの市場プレイヤをひきつけ、競争も激化する。これは、ハードウエアと材料の両方で、3Dプリンティング産業の成長を強く後押しすることになる」とMok氏はコメントしている。