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微弱な近赤外光を可視光に変換して検出する技術を開発

December, 13, 2022, 山梨県上野原--帝京科学大学 生命環境学部 自然環境学科の石井あゆみ准教授らは、微弱な近赤外光を可視光に変換する材料を利用した新しい近赤外光センサを開発した。

近赤外(NIR)光は、赤外線カメラ(暗視カメラ)、赤外線通信(ワイヤレス通信)、光ファイバ通信、リモコンや生体認証など、幅広い分野で日常的に利用されている。光通信技術、医療診断や環境計測などの発展において、近赤外領域における微弱な光の検出や高感度化は必要不可欠。近赤外領域の光を検出するため用いられている材料として、900~1700nmに最適な吸収帯を持つ化合物半導体(InGaAsなど)が挙げられるが、レアメタルを用いた複雑な製造工程から価格が高く、ノイズによる制約が大きいなど、シリコン(Si)などを用いた可視光検出の精度にまで至っていないのが現状。

研究グループは、微弱な近赤外光を高い効率で可視光に変換できるコアシェル型希土類系アップコンバージョンナノ粒子を開発した。さらに、このナノ粒子を可視光に応答する無機半導体材料(ハロゲン化鉛ペロブスカイト)と組み合わせた近赤外受光素子(フォトダイオード)を開発し、高感度に検出することが難しいとされてきた微弱な近赤外光を75%の効率で電気信号に変換することに成功した。すなわち、高感度に検出することが難しいとされてきた近赤外光を、既存の技術や材料で高い精度の検出が可能な可視光に変換するという安価で簡便な新しい手法により、微弱な近赤外光の検出効率の飛躍的向上を達成した。

研究成果は、低いエネルギーの近赤外光を高いエネルギーの可視光に変換するナノ材料を利用した省資源・省エネな新しい近赤外光の検出手法を提案したものである。太陽光の中でも検出やエネルギーとしての利用が難しい近赤外領域の微弱な光を可視光に“変換して利用する”ことを可能としたこの技術により、光センサの近赤外光受光感度や太陽電池などの人工光合成における太陽光利用効率の飛躍的な向上が期待される。

研究は、桐蔭横浜大学 医用工学部 臨床工学科の宮坂力特任教授との共同開発。

研究成果は、2022年12月9日(米国東部時間)に国際科学誌「Advanced Photonics Research」のオンライン版で公開された。
(詳細は、https://www.jst.go.jp/)