Science/Research 詳細

MIT、より高感度なX線イメージング

March, 4, 2022, Cambridge--X線を光に変換する材料の改善で、医療あるいは産業用画像で、10倍の信号強化が可能になる。

シンチレータは、高エネルギー粒子、つまりX線を当てると光を放出する材料。医療、歯科X線システムでは、シンチレータは、入射X線放射を可視光に変換し、それをフィルムまたはフォトセンサで捉えることができる。シンチレータは、暗視システム、あるいは粒子検出器、電子顕微鏡などの研究にも使われる。

MITの研究者は、シンチレータの効率が、どのように改善できるかを示した。少なくとも10倍、材料の表面を変えることで100倍も可能である。波のようなリッジアレイなど、一定のナノスケール構成を作る。より効率的なシンチレータを開発する過去の試みは、新しい材料を見つけることに焦点を当てていたが、新しいアプローチは、原理的に既存の材料で有効である。

シンチレータを既存のX線装置に組み込むには、より多くの時間と労力が必要であるが、チームは、この方法は医療診断X線、CTスキャンの改善につながり、照射線量の減、画像品質の改善となる。他のアプリケーション、品質制御向け製造部品のX線検査などでは、新しいシンチレータは、高精度、高速検査を可能にする。

研究成果は、Scienceに発表された。著者は、MIT博士課程学生、Charles Roques-CarmesとNicholas Rivera; MIT教授Marin Soljacic, Steven Johnson, およびJohn Joannopoulos他。

シンチレータは、70年ほど使われているが、その分野の研究の多くは、より光輝度、高速光発光の新材料の開発重視だった。それに代わり、新しいアプローチは、既存の材料にナノテクノロジーの進歩を適用すること。シンチレータ材料に、放出される光波長に匹敵する長さスケールでパタンを作ることで、チームは、その材料の光学特性を飛躍的に変えられることを確認した。

チームが名付けた「ナノフォトニックシンチレータ」を作るためは、「シンチレータ内に直接パタンを作ることである、あるいはナノスケールの孔をもつ別の物質を貼り合わせることができる。その詳細は、正確な構造と材料に依存する」(Roques-Carmes)。この実験のためにチームは、シンチレータにほぼ1光波長、約500nm離して孔を開けた。

「われわれが行っていることのカギは、われわれが開発した一般理論とフレームワークである」(Rivera)。これによって研究者は、ナノフォトニック構造の任意の構成で生成されるシンチレーションレベルを計算できる。シンチレーションプロセスそのものは、一連のステップに関与しており、解明は複雑。チームが開発したフレームワークは、3つの異なる物理学の統合に関係している。このシステムを使うと、研究チームの予測と後続の実験結果とがよく一致していることが分かった。

実験は、処理したシンチレータからの放出の10倍改善を示している。「したがって、これは医療イメージングのアプリケーションになるものである。医療イメージングは、光学フォトン不足、つまりX線の光への変換が画像品質を制約している。医療イメージングでは、患者にあまりに多くのX線を照射したくない、特に定期的なスクリーニング、若い患者でも同様である」とRoques-Carmesは、コメントしている。

「これは、ナノフォトニクスの研究に新分野を開く。ナノフォトニクス分野で行われてきた多くの既存の研究を使って光を発する既存材料を著しく改善できる」と同氏は付け加えている。

マサチューセッツ総合病院、神経放射線学主席、ハーバードメディカルスクール(Harvard Medical School)准教授、この研究の関係者ではないRajiv Guptaは、「この論文の研究は、極めて重要である。1000億ドル医療X線産業で使われているほぼ全てのディテクタは、間接ディテクタである」と言う。同氏による、これは、新発見が適用されるタイプのディテクタである。「今日、臨床診療で使う全てが、この原理に基づいている。この論文は、このプロセスの効率を10倍改善している。この主張が部分的に真だとして、例えば改善が、10倍ではなく2倍だとしても、その分野にとっては変革的である」と同氏は話している。

Soljacicによると、放出で10倍の改善を証明した実験は、特別なシステムで達成できた。ナノスケールパタンニング設計のさらなる微調整によるものである。「あるシンチレータシステムでは100倍の改善達成が可能であることをわれわれは示しているが、それをさらに改善する道があると考えている」と同氏は話している。

ナノフォトニクスの他の領域、光がナノメートルスケールで構造化された材料と相互作用する仕方を扱う領域では、コンピュータシミュレーションが迅速で大きな改善を可能にした。例えば、ソーラセルやLEDsの開発。このチームがシンチレーティング材料のために開発した新しいモデルは、この技術で同様の飛躍を促進する、とSoljacicは、指摘している。

Soljacicは、「ナノフォトニクス技術は、光の挙動の調整や増強に究極的な力を与える。しかし、今まで、シンチレータでこれをする、この兆候、技能は不達だった。シンチレーションのモデリングが極めて困難だったからである。今回、この研究が初めて、シンチレーションのこの領域をナノフォトニクス技術のアプリケーションに開く、それを完全に開く」と語っている。より一般的には、チームは、ナノフォトニクスとシンチレータの組合せが、究極的に、より高い分解能、X線量の低減、エネルギー分解X線イメージングを可能にすると考えている。

この研究の関係者ではないUC Berkeleyの電気光学/コンピュータサイエンス教授Eli Yablonovitchによると、この研究は「非常に独創的で、優れている。新しいシンチレータコンセプトは、医療イメージングや基礎研究で極めて重要である」と離している。

さらに同氏は、「そのコンセプトは、今後、実際的なデバイスで証明される必要がある」としながら、「光通信や他の領域でフォトニック結晶に関する長年の研究の後、フォトニック結晶がシンチレータに適用されなければならないことが、この研究まで、延び延びになっていた。このことは、実質的に極めて重要であるが、今まで見過ごされていたのだ」と付け加えている。
(詳細は、https://news.mit.edu)