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磁気熱イメージングでシンクロトロン機能をラボへ

October, 15, 2021, Ithaca--以前は、シンクロトロンファシリティでのみ利用できたナノスケール、ピコ秒分解能の磁気熱イメージング法が、間もなくラボのテーブルトップになる。

空間、時間分解能におけるこのイノベーションにより研究者は、金属から絶縁体まで、幅広い材料の磁気特性を驚くほど見通すことができる。全てラボの快適環境から見ることができるので、磁気ストレージデバイスの開発を促進する可能性がある。

「磁気X線顕微鏡は、比較的稀である」とプロジェクトリーダー、応用物理学、工学物理学准教授Greg Fuchsは言う。「この種の空間・時間分解能の磁気顕微鏡は、極めて稀である。通常、空間か時間のいずれかを選択しなければならない。両方をとることはできない。それが可能な場所は世界に4箇所、5箇所程度だ。したがってテーブルトップでそれができることにより、実際にナノスケールでスピンダイナミクスの研究を可能になる」。

研究成果は、Nano Lettersに発表された。

論文は、磁気熱顕微鏡で磁気イメージングを研究したFuchsグループの10年近くの研究成果の頂点である。材料に光、電子あるいはX線を当てる代わりに、グループはスキャニングプローブに集束したレーザを使って熱を微小なサンプルに適用し、局所磁気情報を得るために結果としての電圧を計測した。

Fuchsのチームは、このアプローチを研究し、数年をかけて、温度勾配が時間と空間でどのように進化するかを理解した。

「熱は、非常に緩慢な拡散プロセスと考えられるが、実際、ナノメートルスケールの拡散は,ピコ秒である。そこが重要な洞察である。それによってわれわれは時間分解能を達成した。光は波であり、回折する。光は,非常に小さな長さのスケールでは、消失に時間がかからないが、熱は違う」(Fuchs)。

以前、グループは、その技術を使って反磁性材料、また磁気金属や絶縁体をイメージング、操作しようとした。それらは磁界を生成しないので、研究が難しい。

レーザを集光することは容易であるが、大きな障害は、そのプロセスを機能させるために、光を閉込め、ナノメートルスケールで十分な熱を生成することである。また、そのスケールでの現象の中には非常に素早いものがあるので、イメージングは、同様に迅速でなければならない。

「ものが小刻みに動いている磁気には多くの状況があり、またそれは小さい。また、これが、基本的に必要とされるところである」(Fuchs)。

チームが、そのプロセスを改良し、空間分解能100nm、時間分解能100psを達成したので、チームは磁気の実際の細部、スキルミオン、磁気秩序が捻れる擬粒子などを探求することができる。この種の「スピン構造」を理解することは、新しい高速、高密度磁気記憶装置やロジック技術につながる。

磁気だけでなく、その技術の電圧依存は、電圧が材料と相互作用する際、電流密度の計測にそれが使えることを意味する。これは新しいアプローチである。他のイメージング技術は、電流が生成する磁界を計測することで電流を計測するのであって、電流そのものではないからである。

磁気熱顕微鏡には制約がある。サンプルは電気接点構成が必要であるので、材料はデバイスにパタン化されなければならない。結果として,その技術は大きなサンプルには適用できない。また、デバイスとスキャニングプローブは、共に拡大縮小されなければならない。したがって、ナノスケールで現象を計測したいなら、サンプルは小さくなければならない。

しかし、そのような制約は、われわれのラボにおける比較的ローコストの磁気熱顕微鏡形態に比べれば小さなものである。

「現在、この種の計測を行うには、シンクロトロンファシリティなどの公共施設へ行く必要がある。提案を書き、ビーム時間を得て、よくても、作業まで恐らく数週間待つ。望む結果が得られないと、さらに数ヶ月かかる。したがって、これは、その分野における進歩になる」とZhangはコメントしている。
(詳細は、https://news.cornell.edu/)