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ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイの開発

March, 29, 2021, 東京--東京農工大学大学院工学研究院先端電気電子部門の高木康博教授の研究グループは、「ホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイ」の開発に成功した。
 研究グループが研究を行ってきたコンピューター・ホログラフィ技術を応用することで、コンタクトレンズに内蔵したディスプレイデバイスに表示した画像に対して目が自然にピント合わせすることを可能にした。この技術はAR技術で用いられるディスプレイの実現に利用することが期待される。従来のように、ヘッドマウントディスプレイや専用メガネを装着することなく、目の中にコンタクトレンズを入れるだけで、現実世界にデジタル情報を重畳表示できるようになるため、フィジカル空間とサイバー空間を融合した超スマート社会の実現に貢献する。

研究成果
 コンタクトレンズにディスプレイを内蔵しても、目はディスプレイにピント合わせできず、網膜に像を結ぶことができない。この問題を解決するために、以前は、LEDにマイクロレンズを取り付けて、網膜に光を集光する方法が提案されていた。しかし、目が外界の物体にピント合わせすると目の焦点距離が変化するため、この方法では光の集光がうまくいかなくなる問題があった。
 研究では、ホログラフィ技術を用いることを提案した。ホログラフィは、物体から発せられる光の波面を発生することで、立体表示を行う。目から離れた位置にある物体からの波面をコンタクトレンズ内の表示デバイスで発生することで、目が立体像に対してピント合わせできるようになる。この場合、物体からの波面が再現されているため、目は実物に対するのと同じように立体像に対して自然にピント合わせできるようになる。コンピュータ・ホログラフィ技術を用いると、様々な画像を表示することが可能になる。
 提案したホログラフィック・コンタクトレンズディスプレイの構造。コンタクトレンズの厚さは一般に0.1 mm程度と薄いため、これに内蔵できる構造の実現がキーとなる。ホログラム表示を行う位相型空間光変調器や、光の偏光を制御する偏光子は、数マイクロメートルの厚さで実現可能。今回は、位相型空間光変調器をレーザ照明するバックライトの厚さを、HOEを用いることで0.1 mm程度にすることを可能にした。

(詳細は、https://www.tuat.ac.jp)