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光をトラップするナノキューブで安価なマルチスペクトルカメラ

January, 8, 2020, Houston--デューク大学の研究チームは、特注電磁材料によって作られたオンチップスペクトルフィルタを使うことで、前例のない範囲の光周波数をカバーするフォトディテクタを実証した。一つのチップで、マルチフォトディテクタと多様な周波数応答の組合せにより、軽量、安価なカメラが可能になる。アプリケーションは、ガン手術、食品安全検査、精密農業などである。

一般的なカメラは可視光のみを捉える。これは、利用可能なスペクトルのほんの一部である。例えば、赤外、UV波長に特化した他のカメラもあるが、スペクトルに沿った分離点からの光を捕らえられるものはほとんどない。また、そのようなものは多くの欠点に悩まされる、例えば複雑で信頼度の低い製造、スピードが遅い、輸送が難しいほど大きい、コストが数十万ドルなどである。

デューク大学の研究チームが、Nature Materialsに発表した研究は、新しいタイプのブロードスペクトルフォトディテクタを実証している。これはHシングルチップに実装できるので、1秒の数兆分の1程度でマルチスペクトル画像を捕らえることができ、わずか数十ドルで製造可能である。その技術は、プラズモニクスという物理学に基づいている。つまり、ある光周波数を捕らえるためにナノスケールの物理現象を利用する。

「トラップされた光は急激な温度上昇を起こすので、われわれはクールであるが、ほとんど忘れられた焦電体という材料を利用することができる」と同大学電気・コンピュータ工学准教授、James N. と Elizabeth H. Bartonは説明している。「しかし、われわれが、ホコリを払ってそれらを最先端技術と統合したので、これらの信じられないほど高速で、入力光の周波数の計測もできるディテクタを作ることができた」。

Maiken Mikkelsenによると、商用フォトディテクタは、以前、この種の焦電材料で作られていたが、常に2つの大きな欠点に悩まされていた。それらは、特定の電磁周波数に焦点を合わせることができない、十分な電気信号を作るために必要となる厚い焦電材料層のために、動作が非常に遅かった。

「しかしわれわれのプラズモンディテクタは、どんな周波数にも対応し、多くの熱を生成できるだけのエネルギーをトラップすることができる」と論文の筆頭著者、Jon Stewartは説明している。「その効率は、薄い層で十分であることを示しており、これはプロセスの大幅なスピードアップとなる」。

オンチップフィルタを持つサーマルカメラのどんなタイプでも、以前の検出時間の記録は、焦電体材料であるか否かを問わず、337µsであった。Mikkelsenのプラズモンベースアプローチは、わずか700ピコ秒(ps)の電光石火の速さであった。これは、約50万倍高速である。しかし、その検出時間は、検出に使用した実験計測器に制約されていたので、新しいフォトディテクタは、将来的には、一段と高速になる。

これを実現するために研究チームは、わずか100nm幅の銀キューブを造り、それらを金の薄い層のわずか数nm上の透明膜に設置した。光がナノキューブに当たると、それが銀の電子を励起し、光のエネルギーを捕らえる。しかし特定の周波数である。 

銀ナノキューブのサイズと、金のベース層からの距離が、周波数を決める。一方、吸収される光の量は、ナノ粒子間の間隔を制御することで調整可能である。これらのサイズと間隔を精密に調整することで、研究チームは、そのシステムを所望のどんに電磁周波数にも応答させることができる。

商用のハイパースペクトルカメラにこの基礎物理学現象を利用するために研究チームは、各々を異なる光周波数にチューニングした、微小な、個別のディテクタグリッドをもっと大きな「スーパーグリッド」に作る必要がある。

その目標への第一歩で、チームは、750~1900nmの波長に調整した4つの個別フォトディテクタを実証した。そのプラズモンメタサーフェスは、入力光の特定周波数からのエネルギーを吸収し、加熱する。その熱は、直ぐ下の窒化アルミニウムという焦電材料の薄い層の結晶構造に変化を誘発する。その構造変化から電圧が生じ、次にそれがシリコン半導体コンタクトの底層で読み取られ、信号がコンピュータに送られて分析される。
(詳細は、https://pratt.duke.edu)