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見えない世界を暴くメタサーフェスカメラ

July, 11, 2019, Cambridge--偏向は光の振動する方向であるが、人の眼には見えない(ある種のエビや昆虫などには見える)。しかし、それと相互作用する対象物について多くの情報を提供する。偏向光を見るカメラは、現在、材料歪の検出に使用されており、対象物検出のコントラストを増強し、窪みや傷の表面品質を分析する。
 とはいえ、初期のカラーカメラと同様、現行世代の高偏光感度カメラは大きい。さらに、可動部品に依存することが多く、高価であり、潜在的アプリケーションの範囲を著しく限定している。
 ハーバードSEASの研究チームは、シングルショットで偏向を撮像できる、非常にコンパクトなポータブルカメラを開発した。その微小カメラは、親指サイズであり、自律走行車、オンボード航空機あるいは人工衛星のビジョンシステムに役立ち、大気化学の研究、あるいは隠された物体の検出に使用できる。
 研究成果は、Scienceに掲載されている。
 論文のシニアオーサー、Federico Capassoは、「ほとんどのカメラは、一般に光の強度と色を検出できるだけであり、偏光を見ることはできない。このカメラは、現実に存在するものに対して新たな眼を持っているので、光がわれわれの周辺世界でどのように反射され、透過されるかを明らかにすることができる」と説明している。
 「偏光は、表面からの反射で変わる光の特性である。その変化に基づいて、偏光はわれわれが対象物を3D再構成する際に、深度、構造や形状の推定、人工物と自然のものとの区別、たとえそれらが同じ形状や色に見えても、その区別に役立つ」とSEASのPaul Chevalierは説明している。
 その強力な偏光の世界を解放するために、Capassoとそのチームは、波長サイズで光と相互作用するメタサーフェス、ナノスケール構造の潜在性を活用した。
 「光を完全偏光で計測したいなら、異なる偏光方向に沿って複数の画像を撮る必要がある。以前のデバイスは、可動部品を使うか、あるいは光をマルチパスに沿って送るかのいずれかで、マルチ画像を取得していたので大きなオプティクスになっていた。新しい戦略では、特殊パタンのカメラピクセルを使うが、このアプローチは完全偏光状態を計測するのではなく、非標準的なイメージングセンサを必要とする。この研究では、われわれは必要な全てのオプティクスを1つの簡単なメタサーフェスデバイスに組み込むことができる」と論文の筆頭著者、Noah Rubinは説明している。
 偏向光が物体と相互作用する仕方についての新しい理解を利用して研究チームは、メタサーフェスを設計した。これは、多くのサブ波長間隔のナノピラーを使い、偏光に基づいて光を方向付ける。光は、次に、4つの画像を形成し、各々が異なる偏光面を表している。まとめると、これらはすべてのピクセルで完全偏光スナップショットになる。
 デバイスは約2㎝長で、スマートフォンカメラほどの複雑さもない。付属レンズと保護ケースで、そのデバイスは小型弁当箱程度のサイズになる。研究チームは、そのカメラをテストし、射出成形プラスチック物体の欠陥を明らかにした。また、それを外に持ち出して偏光オフの自動車の窓ガラスを撮った。さらに自撮りで、偏光カメラが顔の3D輪郭をどのように視覚化できるかを実証した。
 「この技術は、既存のイメージングシステムに組込可能である。例えば、携帯電話や自動車に組み込むと、偏光イメージングが普及し、以前にはなかった新しいアプリケーションが可能になる」と論文の筆頭著者Noah Rubinはコメントしている。
 「この研究は、前例のないコンパクトさのカメラに新たな方向性を与え、アプリケーションは、大気科学、リモートセンシング、顔認証、マシンビジョンなどが考えられる」とCapassoは話している。