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高効率照明に人工のハイブリッド結晶を利用

July, 17, 2015, Toronto--トロント大学電気・コンピュータ工学部の研究チームは、2つの有望な太陽電池材料を初めて結合してLED技術の新たなプラットフォームを作製した。
 研究チームは、強い発光性を持つナノ粒子、コロイド状の量子ドットをペロブスカイトに埋め込む方法を考案した。ペロブスカイトは溶液から容易に作り出せる材料であり、電子は最小の損失で、欠陥に捉えられることなく素早く移動する。
 両者を結合した結果は黒い結晶。これは電子を量子ドットに流し込むためのペロブスカイトマトリクスを利用しており、電気を光に変換する点では極めて効率的である。超高効率のLED技術によって、可視光LED電球から、新しいディスプレイまでが可能になる。
 大きな課題は2つの結晶構造を整列させること、ヘテロエピタクシ(heteroepitaxy)だった。ヘテロエピタクシを実現するために、研究チームは、2つの結晶のつなぎ目が欠陥なく滑らかに整列するように、2つの結晶構造の原子的な「端」を接続する方法を考案した。論文の共著者、Dr. Zhijun Ningによると、ナノスケールのスカフォールディング(足場)「シェル」(枠)を溶液の量子ドット周辺に作ることから始めると、次にそのシェルの周囲にペロブスカイト結晶が成長し、両者が整列する。
 結果として得られたヘテロジニアスな材料は、エネルギー効率の高い新しい近赤外LEDsの基盤になる。近赤外LEDは、改良暗視技術、生体医学イメージングの改善、高速通信に利用できる。
 2つの材料をこのように結合することで、自己吸収という問題が解決される。自己吸収とは、物質が同じスペクトルエネルギーを部分的に再吸収して放出し、正味の効率が落ちることを指している。「ペロブスカイト内のこれらのドットは、再吸収しない、ドットの発光がペロブスカイトの吸収スペクトルと重ならないからだ」とDr. Riccardo Comin氏は説明している。
 研究チームは、新しい材料を溶液処理に適合するように設計した。したがって、最も安価で、太陽光薄膜やデバイスの商用製法に容易に組み込むことができる。次のステップは、ハードウエアを構築してテストし、この研究で実証したコンセプトを活用することになる。