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曲げ、伸縮自在フレキシブルLEDs

November, 4, 2021, Washington--Washington University in St. Louis、McKelvey 工学部では、折り畳み可能なデジタルディスプレイが開発されつつある。

Preston M. Green電気&システム工学部准教授、Chuan Wang研究室の研究チームは、インクジェットプリンタを使って製造できる新しい材料を開発した。
研究成果は、Advanced Materials.に発表された。

有機LEDsは、小さな有機分子あるいはポリマ材料でできており、安価で柔軟。「曲げたり、伸ばしたりできるが、相対的に低パフォーマンスで短寿命。MicroLEDのような無機LEDsは、ハイパフォーマンス、超高輝度、高信頼であるが、柔軟性はなく、非常に高価である」(Wang)。

「われわれが作製したものは有機-無機の複合。両世界のベストを持つ」(Wang)。

研究チームは、有機金属ハロゲン化ペロブスカイトという特別なタイプの結晶材料に斬新な工夫を加えて使用した。薄いペロブスカイトの層を作る従来法は、液状で、それをフラットな回転基板、回転アート玩具のようなものの上にドリップする、スピンコーティングとして知られるプロセス。基板が回転するにともない液体が広がり、最終的に薄い層でそれを覆う。

そこから、回復し、ペロブスカイトLEDs、つまりPeLEDsができる。

しかし、スピンアートのように多くの材料が、そのプロセスで無駄になる。基板は数千RPMで回転するので、ドリップするペロブスカイトの一部が飛び散り、離散し、基板に付着しない。

Wangは、「それは液状なので、スピンコートの代わりに、インクジェットプリンタの利用を考えた」と言う。

インクジェット製造は材料の節約となる。ペロブスカイトは必要な箇所だけに堆積されるからである。文字や数字が一枚の紙に印刷されるのと同じように正確である。飛散も無駄もない。そのプロセスは遙かに高速であり、5時間以上の製造時間を25分以下に短縮する。

インクジェットプリンティング法を使うもう1つの利点は、エレクトロニクスの未来を再構築する可能性があること。ペロブスカイトは、様々な非定型型基板にプリント可能である。スピニング中に安定しないような、例えばゴムなどが含まれる。

フレキシブルなディスプレイには、堅いLEDsをゴムにプリントすることはうまく行かない。LEDs自体がフレキシブルになる必要がある。ペロブスカイトは、そうではない。

WangのラボのPh.D候補、論文の筆頭著者、Junyi Zhaoは、無機ペロブスカイト結晶を有機、ポリマ接着剤でできたポリママトリクスに埋め込むことでその問題を解決することができた。これによりペロブスカイト、それに関連するPeLEDsそのものも自然な弾性、伸縮性となった。 両方の世界のベストである。

そのプロセスは簡単ではなかった。ラボで、成功するまでに数日、数夜かかった。最大の障害は、材料の異なる層が混合しないように保証することだった。

PeLEDの全ての部分が、ペロブスカイト層と2つの電極およびバッファ層、液体であるので、主要な問題は、全ての層が混合しないようにすることだった。

LEDsは、サンドイッチのような構成で作られる、少なくとも発光層、アノード層およびカソード層。電子とホールのトランスポート層など、他の層が使われることもある。Zhaoは、ペロブスカイト層が、他の層と混合しないようにしなければならなかった。書き立てのインクにハイライターを入れると、それを汚す可能性がある。

適切なポリマを見いだす必要があった。ペロブスカイトと他の層の間に挿入してペロブスカイトを保護し、PeLEDパフォーマンスを妨げないようにするものである。

「ベストの材料、ベストの厚さを見いだした。これは、デバイスのパフォーマンスと保護のバランスをとる」(Zhao)。続いて同氏は、初の伸縮性のあるPeLEDsをプリントした。

これらPeLEDsは、エレクトロニクス革命の第1段階に過ぎないかも知れない。それらは、ウエアラブルデバイス、スマートウエアラブル、血中酸素を計測するパルス酸素濃度計のようなものを作るために使える。
 伸縮性があり柔軟なPeLEDsを安価に迅速にプリントできることにより、まだ考えつかないような新技術が実現するかも知れない。
(詳細は、https://engineering.wustl.edu)