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光吸収が拡散体における光路を整える

July, 9, 2014, Utrecht--トゥエンテ大学(University of Twente)とイェール大学(Yale University)の物理学研究チームは、不透明な材料を通り抜ける光は、材料が部分的に光を吸収するなら、光路がより真っ直ぐになることを発見した。この洞察は、生物組織内の医療イメージング改善に使える可能性がある。
 散乱媒体を透過する光の粒子は、いわゆるランダムウォーク(酔歩)になる。つまりぎこちなく、ぎくしゃくと、材料をよろめきながら透過していく。オランダとアメリカの研究チームは、紙、塗料、生物組織など、不透明な媒体では、光吸収がこのランダムウォークを実際に整え、真っ直ぐにすることを発見した。散乱によって回折が少なくなるため、不透明材料でのイメージングは、光吸収の結果、改善されることになる。これは直観に反することのようであり、通常は光吸収はイメージングに弊害をもたらす。可視像の強度が弱まるからである。
 光の吸収がなければ、不透明な媒体を透過する光の粒子(フォトン)は、材料の不規則性によって、直線光路から繰り返し屈折する。この散乱によって光の伝搬方向がランダムになる。するとフォトンを、元の空間方向でイメージングに使うのが難しくなり、形作る像の鮮明さが材料の中で徐々に失われていく。
 光は波のようにも振る舞うので波の干渉を示す。つまり、違う光路を進む光が相互に強めあったり、消し合ったりする。材料の長短パス間の干渉によって、伝搬された光から情報を引き出すのが難しくなる。
 しかし、もし十分な光が吸収されるなら、干渉が抑制される。数値計算では、長くて蛇行する光路は短く直線的な光路と比べると、抑制の度合いが遙かに高い。その結果、吸収が増えると、真っ直ぐな光路は続き、散乱光路の数は大幅に減少する。
 この原理は、生物組織のような不透明な媒体を透過するイメージングの改善に使える。また、白色LEDsでは遙かに効率的な色変換を達成するためにも使用できる。これは、希土類化合物のような貴重な資源の必要性が少なくなることを意味する。