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LMU化学者、新しいタイプの赤色フォスファ材料を開発

June, 25, 2014, Munich--ルートヴィッヒ・マクシミリアン大学ミュンヒェン(LMU)無機固体化学チェア、Wolfgang Schnick教授の研究チームは、フィリップス(Philips Technologie GmbH)のDr. Peter Schmidtと共同で、LED用の新しい材料を開発した。Schnick氏は、「この新しい材料はLED市場に革命を起こす可能性がある」とコメントしている。
 従来の白熱電球はエネルギー変換効率が非常に低い。そのため、EUは市場から白熱電球を退場させることにした。その結果、近い将来、LEDが選択すべき光源となる。LEDの光は、固体半導体における電子移動によって生成される。水銀を含む省エネランプとは異なり、LEDは環境フレンドリーである。しかも、LEDは高効率であり、エネルギー消費の大幅削減が見通せる。
 1個のLEDは、1つの色調の光しか出せない。しかしSchnick氏の研究チームは、画期的な蛍光物質を合成することで注目に値する技術的ブレイクルーをこれまでに達成していた。このブレイクスルー技術により、従来のLEDで生成する青色光を可視域の全ての色に変換できる、特に赤端で光が出せる。多様な色を混合することで高品質の白色光が得られる。
 青色を生成するLEDは、それを多様な発光セラミックスでコーティングすることで白色光エミッタに変換できる。この材料は、青色光の一部を吸収して、シアンから赤までの可視光域の、全ての他の色に対応する波長でエネルギーを再放出する。これらの色成分と、吸収されなかった青色光とを組み合わせることで純粋な白色光が得られる。このプロセスは単純なように聞こえるが、実際に実現するのは極めて難しい。非常に高い熱安定性を持ち、高効率で動作する蛍光が必要になるからだ。
 「市販の白色LEDの問題は、最適エネルギー効率と許容できる演色との間に常にトレードオフが存在することだ」とSchnick氏は言う。これまで使われていた赤色発光蛍光材料が、この問題の主因である。その材料が、いわゆる演色評価数に、特に大きな影響を持っているためである。業界では、深紅領域で発光する新しい蛍光材料に対する要求も強まっている。これによって、最適効率と最も自然な演色との調和という相矛盾する要求が実現可能になるからである。
 Schnick氏とSchmidt氏の研究チームが開発した新しい材料は窒化ストロンチウム[LiAl3N4]をベースにしている。適切な量のユーロピウムを添加すると、この化合物は赤色域の非常に狭い範囲で強い発光を示す。ピーク発光は、波長650nm付近、ピーク幅はわずか50nm。この新しい材料を組み込んだ最初のプロトタイプLEDは、従来の白色LEDよりも発光は14%強く、優れた演色評価指数を示している。「この独自の発光特性により、新しい材料はこれまでにLEDで使用した全ての赤色発光蛍光を凌駕しており、産業用途で大きな可能性が期待できる」とSchnick氏は結論づけている。
 研究チームは現在、この新しい赤色蛍光材料の合成物を改善して、量産に向けた最適化を行っている。研究チームの目標は、最高の演色性を持つ、より高輝度で高効率の次世代白色LEDに道を開くことにある。