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レタスは光強度・光質により代謝を自在に改変する

May, 29, 2018, つくば--筑波大学 生命環境系 草野都教授、電力中央研究所 庄子和博上席研究員、北崎一義(現北海道大学 助教)、理化学研究所 福島敦史研究員およびUC Davis Genome Center(米国) Richard Michelmoreらの研究グループは、さまざまな人工光照射条件下でサニーレタスを栽培した際に起こる代謝の違いを、統合オミックス解析により世界で初めて明らかにした。
 研究では、狭波長LED光源を用い4種類の光質、青色光(ピーク波長=470nm)・赤色光(680nm)および2種類の緑色光(510nm、524nm)、それに2種類の光強度、2種類の照射期間を設定し、これらすべての組み合わせ条件下における代謝物群蓄積パターン(代謝物プロファイル)を調べるため、3種類の高性能質量分析装置を駆使したメタボロ―ム解析を行った。その結果、短期間の光照射では光強度の差が代謝物プロファイルの差に最も大きく寄与するのに対し、長期間の光照射では光質の違いにより大きな差異が生じることを見出した。また、メタボロ―ムデータの詳細な解析により、味にかかわる成分である糖類やアミノ酸類の蓄積パターンは、光質・光強度・照射期間のすべてに影響を受けることがわかった。
 次に、遺伝子の転写物の発現パターン(転写物プロファイル)を包括的に解析できる次世代DNAシーケンサを用いたRNA-Seq解析により、光質によって代謝ネットワークに与える影響が異なることを明らかにした。また、サニーレタスが生産する代謝物群のうち、抗酸化成分であるフェニルプロパノイドおよびフラボノイド類の生合成経路に代謝物・転写物プロファイリングの統合解析によって、フラボノール類は青色光照射により特異的に代謝が促進される一方で、クロロゲン酸類は、波長が長くなるにつれ代謝物蓄積量が段階的に変化することがわかった。
 これらの成果は、将来的に植物工場などで生産される野菜に対し、味や健康にかかわる有用代謝物生産を自在に操る技術開発に貢献できると考えられる。
 研究成果は、「Scientific Reports」で公開された。
(詳細は、www.tsukuba.ac.jp)