September, 16, 2016, Berlin--街路灯の従来の電球を省エネLEDによる置き換えの広がりが、都市の夜のハンター、コウモリに大きな影響を与えている。
日和見種のコウモリは狩猟機会を失い、一方光に敏感な種は利益を得ている。これは、動物園と野生動物研究(IZW)ライブチッヒ研究所のChristian Voigt氏とDaniel Lewanzik氏による最近の研究で明らかにされた。
従来の高圧水銀灯は広い波長スペクトルを持ち、これには紫外領域も含まれている。したがって、昆虫は魔法にかけられたように街路灯や家から漏れる間接的な光に引き寄せられる。蛾、蚊、カブトムシや他の昆虫が、いわゆる「掃除機効果」によって光に引き付けられる。昆虫は、明かりの周りをまわり、時には昆虫捕食者の餌食になる。例えば、光に耐性のあるコウモリの中には光に群がる昆虫をあさるものがある。そのような種には、街路灯は明かりのついた「ビュッフェ」である。しかし、街路灯に使われる新しいLEDはUV光を発しない。したがって昆虫は街路灯を無視し、もはや灯りに群がることはない。IZWの研究チームは、LED電球の利用増が、都市部のコウモリの活動にどのように影響を与えるかを調べた。
以前は、アラブコウモリのような日和見種は光に対する耐性があり、夜間に都市の明かりの中でも獲物を追うことがよく知られていた。ネズミ耳のコウモリなど光を避ける、光に敏感な種は主に暗い公園や森で獲物を捕っていた。
研究チームは、ドイツの6都市の46の街路灯にコウモリレコーダーを導入した。狩りをするコウモリの反響定位(echolocation)コールを記録することで、コウモリレコーダーは自動的に、従来の街路灯とLED街路灯でコウモリの存在を検出する。
調査結果は興味深いものだった。普通のアラブコウモリの活動はLEDランプ付近では45%減少したが、通常人工の光を避けている光に敏感な種の活動が4.5倍増加した。ナトゥージウス(アブラコウモリ属)など、LEDの低減された波長スペクトルの影響を全く受けない種もあった。Voigtは「したがって、光に敏感なコウモリはLED利用増の恩恵を受けているが、日和見種のコウモリは被害を受けていると結論した」とコメントしている。日和見種のコウモリは、十分な餌を得るために飛行距離が長くなると考えられる。
1つ確実なことがある。コウモリは採食行動を新しい状況に適応させていき、したがって、特定地域のコウモリ集団内の種の構成も都市環境で変化しそうである。「LED照明の利用と、コウモリの活動の変化のいずれも、昆虫の数に大きな影響を与えると考えられる。コウモリは、都市環境で昆虫の最大の捕食者だからである」とVoigt氏は強調している。
今後、蚊や他の昆虫を不快に感じることが多くなるかという問いに対して、Voigt氏は「そうなる、これはマイナス面となるだろう」と答える。「しかし、蛾も増える。したがって、受粉媒介者も増える」。受粉媒介者が増えることは、種子の生産も増えることを意味し、植物は利益を受ける。このような影響は、街灯の省エネを目的にしていた人がだれも考えなかった影響である。
LEDsは非常にエネルギー消費が小さく、電気料金が下げられる。さらに、LEDは、最大強度が必要でないときは、動的に調光できる。これは大きな利点のように聞こえるが、それが問題にもなる。人々が至る所で照明にLEDsを使う傾向は、潜在的なエネルギー節約の問題を払拭することになるし考えられる。
これは、着実な光害(light pollution)の増加にもなる。人の健康に対する光害の悪影響は、すでに十分な文献がある。
「人は昼行性動物である、昼と夜のリズムは、メラトニンのようなホルモンの分泌によって決まる」「一方で、人工光は人々に影響を及ぼすだけでなく、野生動物や生態系全体にも影響を与える」とChristian Voigtは強調している。
(詳細は、www.izw-berlin.de)