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光で天敵を集め、害虫を減らす技術を開発-紫色光の照射だけで害虫が半減

September, 16, 2016, つくば--アザミウマはナス、トマト、イチゴなど多くの農作物に害を与える大害虫。近年、農薬が効かなくなりつつあり、大きな問題となっている。
 農研機構生物機能利用研究部門、株式会社シグレイ、筑波大学は共同で、農薬を使う代わりに「光を使って天敵を集める」ことにより、アザミウマを防除する技術を開発した。

研究チームは、アザミウマの天敵である「ナミヒメハナカメムシ」が紫色の光に強く誘引されることを明らかにした。過去の知見から、アザミウマは紫色の光に誘引されないことが知られている。
 ナスの露地栽培において紫色の光を照射し、照射なしの場合に比べ、天敵のナミヒメハナカメムシを含むヒメハナカメムシ類の数が10倍に増加。一方、害虫のアザミウマ数は半分以下になり、紫色光照射の高い防除効果が確認された。

研究成果の内容と意義
1.多くの虫は光に向かって集まる特性を持ち、さらに波長により好き嫌い(波長選好性)があることが知られている。ナミヒメハナカメムシの波長選好性を調べたところ、 ほとんどの虫が好まない紫色の光(405nm)に強く誘引されることがわかった。この結果から、紫色の光の照射によってナミヒメハナカメムシを畑に呼び込み、害虫のアザミウマを防除できる可能性が示された。

2.紫色LEDを用いた露地ナス栽培での実証試験において、畑の天敵(ヒメハナカメムシ類)の数は照射なしの場合の約10倍に増加する一方、害虫(アザミウマ)の数は照射なしの場合の半分以下に減少(60%減)し、紫色光 照射の害虫防除効果が証明された。

今後の期待
ナミヒメハナカメムシはアザミウマに加えアブラムシの天敵でもあり、開発技術はアブラムシの防除にも応用できる。農薬の代わりに、天敵や光の照射 を使う害虫防除技術であり、殺虫剤が効かなくなったアザミウマ・アブラムシにも有効。今後は、他の技術と組み合わせることで、無農薬あるいは減農薬栽培を達成するための総合的病害虫管理技術の一つとして普及拡大していくことが期待され。