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資源効率が優れ、コスト効率のよい摩耗耐性コーティング

September, 3, 2021, Aachen--Fraunhofer Institute for Production Technology IPTの研究チームは、ワイヤベースと粉末ベースのレーザクラッディング(LMD)を統合するハイブリッド積層造形プロセスを開発した。
 新プロセスを使ってワークピースに高強度工具鋼の保護コーティングを行い、低コストで表面欠陥を修復できる。この方法で作製した工具コーティングは、他の方法で作製したものと比べて耐摩耗性が優れており、リソース効率がよく、コスト効率が高い。工具コンポーネントでテストシリーズ成功の後、機械油圧コンポーネントにそのプロセスを使用する計画がある。

LMDのような積層造形工程は、コンポーネントの製造、コンポーネントの局所的最適化に使用される。LMDでは、レーザビームがコンポーネント表面に集光し、同時に、粉末またはワイヤの形の充填剤が供給され、溶かされる。LMDは、重度の応力がかかったコンポーネントの保護コーティング、損傷域の修復、短期的にでも、ワークピースの形状変更に最適である。

ワイヤと粉末の組合せは柔軟かつコスト効果が優れている
 Fraunhofer IPTの研究チームは、国際プロジェクトパートナーと協力して、最近完了した”MatLaMeD”研究プロジェクトでレーザ肉盛溶接のハイブリッド変種を開発した。ここで、ワイヤと粉末が同時に加工される。粉末形態で硬質材料粒子をワイヤ材料に加えることでチームは、適用層の硬さや強靱さなど重要な材料特性を選択的に調整することに初めて成功した。加えて、そのプロセスは、純粋粉末プロセスよりも大幅にコスト効果が優れており、純粋ワイヤプロセスより材料の柔軟性か高い。

多様な要求には個別材料組合せ
 多様なアプリケーションにベストの材料組合せを特定するためにチームは、多くの材料をテストした。実用的なテストシリーズ向けのワイヤ材料としてチームは、最終的に熱間工具鋼を選択した。これは構造的安定性が優れており、溶接に適した低合金鋼である。粉末材料には、チームは炭化物形成、細粒化要素としてクロム(Cr)、テストシリーズで硬質相として炭化チタンを使用した。

硬度は最大30%増
ワイヤと粉末を組み合わせることで研究チームは、各アプリケーションに材料成分を柔軟に調整することができた。粉末材料を加えることで工具鋼の微細構造を選択的に変えることができ、コーティングの硬度向上もできた。微量の炭化チタンを加えても、硬度は30%まで増加した。「その新プロセスで、われわれは、様々な熱的、化学的、機械的負荷に迅速かつ柔軟に対応できる。ピンポイント精度で強靱さや硬度を調整できるからである」とプロジェクトマネージャ、Marius Gipperichはコメントしている。同研究者によると、新プロセスは、表面磨耗を最小化する完璧なツールであり、コンポーネントの耐用年数を大幅に拡張する。

油圧部品の機械加工のテストシリーズ計画
“MatLaMeD”プロジェクトの肯定的な結果で研究チームは、特殊な特性の他の材料システムを開発する新しい方法の開発をさらに進める基盤を獲得した。チームは、様々ななアプリケーション領域でそのハイブリッドLMDプロセスを利用する計画である。成形工具の機械加工、油圧部品の摩擦磨耗相の処理など。

研究チームは現在、段階的コーティングシステムでハイブリッドLMDプロセスの使用可能性をテストしている。これをするために、チームは、材料混合の炭化チタン含有量を可能な限り増やしたい。炭化チタンは、溶接中の亀裂感受性を高める高い残留応力の原因となるので、研究チームは、層ごとににTiC含有量を個別調整したいと考えている。

(詳細は、https://www.ipt.fraunhofer.de)