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Fraunhofer ILT、新しい3Dプリンティングプロセスにグリーンライト

September, 4, 2017, Aachen--フラウンホーファーILTは、銅材料の選択レーザ溶解(SLM)に対する新アプローチを発表する。将来的に、純度が高い高伝導性銅でできた3Dプリンティングコンポーネントのコスト効果の高い方法を初めてユーザーに提供することになる。
 SLMは、レーザビーム溶融(LBM)あるいはレーザパワーベッド溶融(L-PBF)としても知られており、いくつかの領域で粉体床ベース積層造形プロセスとしてすでに実証済みである。例えば、医療技術、ターボ機械製造、航空宇宙や自動車工学。現在、スチール、チタンとアルミニウム合金、ニッケルとコバルト合金の加工に主に使用されている。フラウンホーファーILTの研究チームは、AiFドイツ連邦産業研究組合助成の研究プロジェクトの一環としてSLMのさらなる開発を進める意向である。目標は、銅合金や純銅製のコンポーネントのアディティブマニファクチャリング(AM)にそれを適合させること。純銅は、銅合金よりも電気的、熱的伝導性が優れているので、エンドユーザーにとって魅力的なオプションである。したがって、赤外ではなく緑で動作する特殊開発のレーザビーム源を2017年末までにフラウンホーファーILTで設計する。

SLMは現在、銅合金のみに適合
「表面特性により、純銅は通常利用される1µmではレーザ照射のほとんどを反射する」とRapid Manufacturingグループの研究フェロー、Daniel Heussenは指摘する。
 結果的に、レーザエネルギーのわずかな部分しか材料に堆積せず、したがって溶融プロセスに利用できない。反射された照射は、システムのコンポーネントに損傷を与えることもある。加えて、赤外光では、材料が固体から液体状態になると材料の吸収性は急速に増加し、不安定で一時的な再要求プロセスを引き起こす。
 波長515nmのグリーンレーザを使用すると純銅の吸収性は遥かに高くなる。これは、安定したプロセスに必要なレーザ出力が少なくてすむことになる。さらに、レーザビームは、より正確に集光可能なので、新しいSLMプロセスを使ってより繊細なコンポーネントを製造することができる。「材料密度が高いコンポーネントを作製し、細部の高分解能など、他のプラス効果を達成するために、われわれはより均一な溶融プールダイナミクスを望んでいる」とHeussen氏は話している。
 SLMプロセスの境界条件に適合するような「グリーン」レーザ光源は市場に存在しないので、フラウンホーファーILTのレーザビーム源開発部は、「SLMグリーン」という独自のプロジェクト始める。目的は、グリーン波長(515nm)で連続動作する最大出力400ワットで機能するシングルモード動作の高品質レーザの実現。「SLMグリーン」ラボラトリ設置は、2017年末までに準備できる見込みである。
 将来の主目的は、産業ユーザーが中空構造やアンダーカットのある純銅の複雑な形状を3Dプリントできるような高信頼プロセスの実現である。そのようなプロセスは、高効率の熱交換器やヒートシンク、あるいは繊細で複雑な電気コンポーネントの小ロット生産に利用できる。「産業生産における誘導熱処理用のインダクタは、アディティブマニファクチャリングの優れたショーケースである。それらは、高度な複雑性、幅広い多様性を持ちながら、主に少量生産される」とHeussenは説明している。
 また、宝石デザインでも「SLMグリーン」は、従来技術よりも複雑な構造を作製するための効率的で再現性のあるプロセスを提供できる。
 グリーンレーザは、銅だけでなく、非鉄および宝石業界の貴金属にも適合的である。
(詳細は、www.ilt.fraunhofer.de)