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ミラーの変形を補償するデフォーマブルミラーを開発

May, 19, 2014, Jena--レーザビームを使って切断、溶接を行うと超ハイパワーが必要になるが、ここで問題となるのは、ビームを一点に集中させるためのミラーをビームのエネルギーが変形することだ。するとビームは広がり、強度がなくなる。新しいタイプのミラーは、この厄介な変形を修正するために、ミラー自身が変形することができる。
 産業用レーザは、材料の切断、コンポーネントの溶接に使われている。レーザ光は、様々なレンズやミラーを使って一点に集中させられる。焦点が小さくなり、エネルギーが高くなればなるほど、レーザで作業するオペレータの精度はますます高くなる。したがってパワーをON/OFFしながら作業を進めていく。レーザパワーが高くなると、それにともなってミラーが加熱し、ミラーを変形するので、これは簡単ではない。変形したミラーは効果的にレーザの焦点を合わせることができない。焦点がますます大きくなり、レーザパワーは落ちる。
 多くの研究者たちが、レーザの耐熱性を高め、変形をなくす方法を研究している。フランウンホーファー研究所応用光学精密エンジニアリングIOFの研究チームは、全く違う方法を追究している。「われわれは、レーザによる変形を防ぐのではなく、それを修正するミラーを開発した。精密にコントロールされたレベルまでミラーを故意に加熱することで、レーザによる不要な変形を相殺する」とフランウンホーファーIOFのDr. Claudia Reinleinは説明している。
 フランウンホーファーIKTSおよびIlmenau工科大学の研究グループと協働してセラミックミラーを開発した。このミラーは、前面が銅層になっており、温度センサとフィラメントが組み込まれている。レーザビームがミラーを加熱すると、センサがその変化を検出する。ソフトウエアが、ミラーがどの程度強く熱で変形するかを計算し、フィラメントからそれに応じた電流を流す。この加熱により、不要な変形を相殺する。ミラーの裏面にはピエゾ層が取り付けられており、ミラーを変形させレーザビームを乱すエラーを完全に修正する。研究チームはすでにミラーのプロトタイプを開発しており、Optatec展で紹介する。現状では、手動でシステムを制御しなければならないが、将来的にはミラーが変形を自動修正するようになる。
 このデフォーマブルミラーのアプリケーションは工場に限られない。人工衛星もこのブレイクスルー技術の恩恵を受けることになる。人工衛星がチリの大きな粒子と衝突すると、深刻な損傷を受けることになる。近い将来、5~10年先には、レーザビームがそのような危険から人工衛星を守ることができる。ハイパワーレーザがチリの粒子に向けられると、ビームが粒子を押しのけて、その軌道を変え、衛星との衝突を回避する。しかし問題は大気乱流がレーザビームを変えることだ。このデフォーマブルミラーが救いの手をさしのべるのはここだ。まず、別のレーザから大気中にレーザを放射し、乱流がそれをどのように変えるかを分析する。そのデータに基づいて、フィラメントとピエゾ層を使ってミラーを変形し、レーザビームが最適フォーカスでチリ粒子に当たるようにする。
(詳細は、www.fraunhofer.de)